2011年12月24日 (土)

クリスマスはソウルを聴きながら・PART4

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いよいよクリスマス・イヴ。

クリスマスに聴きたいソウル・アルバムも最終章。

 

今まで紹介したのは男女間における愛をテーマにしたものばかり。

本当のところ、神の御加護に近い広い意味での愛、

家族愛、人類愛、無償の愛、

さらには地球上で生を営んでいるものに対しての愛でなければ、

クリスマスが意味する愛の高みには至らないのだと思います。

 

数多くのソウル・アルバムのなかで、

その高みに到達した作品は、残念ながらそう多くありません。

もっと他のジャンルにおいても同じですが。

その中で壮大なスケールでサウンドを構築し愛を表現しして、

聴く者すべてに幸せを与えてくれるアルバムといえば、

マーヴィン・ゲイの『What’s going on』

と音楽好きならば誰もが認めるところでしょう。

 

宇宙の谷間から湧き出ているかのような浮遊感のあるストリングス

新しい時代の夜明けを告げるようなパーカッションの響き、

今までには無い手法を施したアレンジは、

ソウルというカテゴリーに収まれきらない雄大さを感じます。

その宇宙規模のサウンドの上を、

セクシャルで優しいマーヴィンの歌声が乗るわけですから、

聴く者が至福の愛に満たされるのは当然の成り行き。

 

歌われているメッセージは、

ベトナム反戦、黒人公民権運動への同胞への呼びかけ、

環境問題、信仰心についてと、

当時の時代を色濃く反映しています。

ただマーヴィンの歌声は

それらのいつの世も人類が抱える問題を

普遍的なもの変える力があり、慈愛に満ちた表現は、

まるで愛の力を説く宣教師の説教のようにさえ感じます。

このアルバムを「愛の聖書」と名づけても

何ら違和感がありません。

 

今年のクリスマスはテレビを見ないで、

静かに音楽に耳を傾けることをお勧めします。

大切な家族と、親しい友達と、最愛の恋人と、

無事にクリスマスを過ごせることを感謝するために。

また震災でかけがえのない人を失ってしまった人々と

ともに鎮魂のために。

 

すでに天国に召されたマーヴィンですが、

人々が忘れがちな愛について考える機会を与えるため、

日常の何気ない出来事にも愛があることを

気づかせるために、

このアルバムをつくったのだと思います。

Happy Christmas!!

(店主YUZO)

12月 24, 2011 CDレビュー | | コメント (2)

2011年12月22日 (木)

クリスマスはソウルを聴きながら・PART3

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たいへん参考になると大好評の

クリスマスに聴きたいソウル・アルバム第三弾。

ただ過去に紹介したのはファルセット・ボイスばかり。

これでは聴いているうちに涙が溢れ出して

クリスマスどころか通夜になってしまうのご指摘、

探してみたものの全然見つからず草臥れ損とのご批判、

深く肝に銘じ、海よりも深く反省し、

慈愛の絹糸に包まれた大ヒット曲「二人の絆」を含む

とっておきの名盤をご紹介します。

 

もちろんレコード店に行けば、

すぐに見つかることも保障します。

 

この『ハロルド・メルヴィン&ザ・フルーノーツ』、

官能のバリトン・ボイスの持ち主テディ・ペンダーグラスを

リードシンガーに、洗練されたアレンジでは

右に出るものはいないと言われるギャンブル&ハフが

プロデュースしています。

このギャンブル&ハフがプロデュースした作品は、

俗にフィリー・サウンドと呼ばれ、

70年代に数多くの名盤を制作しています。

不倫ソングの大定番ビリー・ポールの

「ミー・&ミセス・ジョーンズ」もこのコンビの作品。

聖なる夜に不倫ソングを紹介する恥知らずなことを、

さすがの私も致しませんのでご安心を。

 

本盤に戻ります。

最大の魅力と上げれば、テディの艶のある歌声に尽きます。

あたかも貴方が彼女に伝えたい気持ちを代弁して、

歌っているかのようです。

伝えたい言葉をすぐに発せずに感情を抑えているものの、

だんだんと抑えきれずに自分の思いが勝ってしまい、

気持ちが昂ぶって、ついには叫んでしまう。

そんな男の無骨な気持ちを全編に渡って表現しています。

 

付き合って2,3年、そろそろ結婚を考えている貴方、

もしくは長い春が続いてるので、もう一度付き合った頃に

戻りたいと思っている貴方に、テディの感情豊かな表現は、

きっと強い味方になってくれるはず。

このアルバムには、

貴方の奥にしまわれた感情の扉を開く力があります。

 

テディの歌に心を動かない女性は絶対にいません。

もし仮にいたとしたら、

そんな彼女はこちらから願い下げです。

テディの歌の力を借りて、貴方の気持ちを彼女に伝え、

二人の記念となる思い出のクリスマスにしてくださいネ。

(店主YUZO)

12月 22, 2011 CDレビュー | | コメント (0)

2011年12月20日 (火)

クリスマスはソウルを聴きながら・PART2

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先回に引き続きクリスマスに聴きたいソウル・アルバム第二弾。

ゆっくりと恋人、もしくは恋人未満の人と音楽を聴いて

ムードを高めたいのに、選曲機能を使うなんて

気持ちが冷めてしまうとお嘆きの貴方、全曲ファルセットで

甘く切なく歌い上げる逸品あります。

 

もう切ないという言葉が虚しく響くぐらいの悲哀で歌うのは、

植木屋で刈ってもらったような真ん丸のアフロヘアが

いかしているテリー・ハフ。

このテリー・ハフ&スペシャル・デリヴァリー『ザ・ロンリー・ワン』

その筋では昔からファルセットの名盤と謳われたアルバムで、

レコード・コレクターズ誌のソウル・ファンク・ベスト100選で、

ぎりぎり94位にランクインしたお墨付きのブツ。

 

クリスマス・イヴは少し部屋の明かりを暗くして、

二人で甘く切ない歌声に耳を傾けるだけで、

この聖なる夜が永遠に続くような気分にさせてくれます。

未だ友達の線を踏み越えられないと悩んでいる貴方には、

テリーの歌声が優しく背中を押してくれるはず。

経験者から助言しますと、

音楽について余計なウンチクを言うのような

野暮なことは絶対してはいけません。

 

それとひとつ注意していただきたいのは、

母国語が英語圏の彼女、英語が堪能の帰国子女と

一緒に聴くのは禁物です。

実はテリーの得意としているは失恋バラードで、

このアルバムも全編、失恋の美学で占められています。

 

一緒に失恋ソングを聴くことで

独りでいる寂しさに気づき、二人見つめ合った瞬間に

恋に落ちたという話もありますが、

それはかなり危険な賭け。

ここは無難に英語のわからない者同士で

聴くのをお勧めします。

 

二人の気持ちが最高潮に達するのは10曲目。

テリーの唯一のヒット曲であり、

メロディ良し、アレンジ良し、切なさ良しのバラード。

言葉をひとつひとつ噛みしめるような歌声に導かれて、

貴方はそっと彼女の肩を抱き寄せるだけで十分です。

テリーの力を信じましょう。

 

検討を祈ります。

(店主YUZO)

12月 20, 2011 CDレビュー | | コメント (0)

2011年12月18日 (日)

クリスマスはソウルを聴きながら・PART1

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クリスマスまで10日をきり、秒読み段階へ。

さすがに節電の自粛ムードも薄れ、街のあちらこちらで

ライトアップされて、電飾が赤や青の光を放ち、

聖なる一夜を演出している。

けれども今年は未曾有の大震災のせいで、

心からクリスマスを楽しむことができないのも事実。

 

派手に騒いで一夜を過ごすよりも、我が家で家族と、

もしくは友達や恋人とホームパーティ風に

静かに楽しむ方も多いのではと思う。

そこで静かなクリスマスにお似合いのソウルの名盤を

イヴまで厳選して紹介します。

 

第1回は、刑務所で結成された囚人グループとして話題を

呼んだエスコーツのセカンド・アルバム「3 down 4 to go」。

アルバム・タイトルは3人が出所して4人は服役中の意味。

それだけ聞くと、極悪非情でメタリックな轟音を垂れ流す

グループと想像してしまうが、それとは正反対の

トロトロに甘いハーモニーを聴かせるコーラス・グループです。

 

プロデューサーは愛の伝道師ジョージ・カー。

ソウル界では、その名前を聞いただけで

腰がメロメロになってしまう甘茶ソウルの大御所。

それだけでもスィートな音は保障されたようなもの。

(註・甘茶ソウルとは、極上なスィート・ハーモニーを

聴かせるソウルの総称。ソウル検定に出ます)

 

曲は全部で11曲入っていて(1曲がボーナス・トラック)

奇数がダンス・ナンバー、偶数がバラードと

交互に収録されているが、聴きどころはやはり偶数サイド。

CD選曲機能をつかってバラードだけを流せば、

音楽が流れている間は二人だけのドリーミーな世界、

デザートよりも甘いとろけるような一夜を過ごせることを、

ジョージ・カーに代わって保障します。

また残念ながら独りでイヴを過ごす羽目になった人には、

涙で枕が濡れるぐらいに恋の思い出に浸れることを、

これまたジョージ・カーに代わって保障します。

 

とにかく2曲目の「Let's make love (at home sometimes)」

の悲しくなるほど美しいファルセット・ボイスは、

うぶ毛がそそり立ち心を鷲づかみにされるほど。

ソウル・バラードに名曲は数々あれど、

個人的には3本指に入る名曲だと信じています。

もし、これを聴いて甘茶ソウルの美学を感じられない人は、

元々甘茶の味が合わないのかも。

 

♪たまには家でメイク・ラヴしようよ~

と囚人に歌わせるジョージ・カーの愛の伝道師としてのセンス。

その美学も壮絶すぎて絶句。

(店主YUZO)

12月 18, 2011 CDレビュー | | コメント (0)

2011年12月16日 (金)

忘年会にはブルースを

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最近、ノンアルコール系の飲み物が売上を伸ばしていて、

ついにその勢いに乗じてカクテルまでも登場した。

アルコールが入っていないカクテルならばジュースだと思うが、

実際に飲んだ人に訊いたところによると、

アルコールが入っているような気持ちにさせるらしい。

訊いた相手は元々酒豪で、身籠ったため今は控えている身分。

そんな人を納得させるのだから開発者の情熱はたいしたものである。

 

しかしどのようなニーズから、

このような飲み物を開発するに至ったのだろうと思う。

お酒が飲めない下戸ならば、

きっぱりとジュースやお茶を頼んでしまえばいいのに感じるが、

そう簡単な図式では語れない或る事情が、

この一連のノンアルコール商品開発には潜んでいるのではと、

つい斜に構えて考えずにはいられない。

 

私の結論はこうである。

年末の風物詩である忘年会対策のために、

下戸の人たちの声に耳を傾け開発されたのではと睨んでいる。

上司から酒を勧められても簡単に断れず、

かといって盛り上がっているなか、

独りジュースを吸っているのも気が引ける。

せめて見た目には皆と同じように宴の輪に紛れていたい。

飲めないことで目立ちたくない。

そういう日本人的な集団依存の感性の声を訊き、

その人たちをこのような地獄の境地から救うべく、

ノンアルコールが生み出されたのではと踏んでいる。

 

表向きの理由として飲酒運転を撲滅するためと嘯いても、

酒が飲みたい輩というのは、自分も含めて、

酒の味が好きなのこともさることながら、

それ以上に酔ってこの世のウサを晴らしたいのである。

ノンアルコールで満足できるわけがない。

 

さてこの写真のアルバムはハウンドドッグ・テイラー

『この猟犬スライドに憑き』という題名の未発表ライブ音源を

収めたもので、2004年に発表されている。

ハウンドドッグ・テイラーの歪んだスライドギターの音で、

脳天を一撃されてぐちゃぐちゃにされ、

いつまでも鼓膜が振動している音といおうか。

腹を空かせた猟犬に耳を喰い千切られたような

恐ろしく凶暴な音。

シカゴの黒人街で鍛えられた胆入りのブルースが聴ける。

 

これを聴くと、ブルースが悪魔の音楽と言われたのも頷ける。

このようなブルースが毎晩演奏されるクラブやライヴハウスでは、

絶対にノンアルコール系はメニューない。

そんなもの頼んだら

「坊やの来るところじゃねえな。とっと帰ってママに抱かれて寝ちまいな」

と言われるのが関の山である。

そう考えたら、忘年会で飲めないことで悩んでいる光景は、

実に平和な日本の健全な在り方かもしれない。

  

ちなみにハウンドドッグ・テイラーが壮絶なギターが弾けるのは、

指が6本あるからだと言われている。

そのハウンドドッグ・テイラーの左手が下の写真。

・・・・・・・ブルースの世界は本当に末恐ろしい。

(店主YUZO)

 

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12月 16, 2011 CDレビュー | | コメント (0)

2011年12月10日 (土)

「君の友だち」を口ずさみながら

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先日、大学の先輩同士が再婚した。

 

親に反対されてお互いに本意でない相手と結婚したものの、

その想いの火は消えず、

それどころか一緒にいたい気持ちは募るばかり、

そして月日が流れることウン十年、念願かなって結ばれた。

・・・・・・というようなドラマティックな結婚話ではない。

たぶん第二の人生を気心の知れた人と過ごしたい

というのが真意だと思うが。

 

その真意を単刀直入に訊くのも野暮だし、

分別のわかる年齢になった以上、大人の恋愛を

根掘り葉掘りきくのも見苦しい。

私は粋を心情にしている人間である。

 

その信念に従ってささやかな結婚パーティの席でfは

お祝いにマトリョーシカをプレゼントして、

「マトリョーシカを閉めるときに、願いことを言うと叶うというジンクスがありますので、それだけは忘れないでください。いつまでもお幸せに」

とさらりと祝詞を述べただけに留めた。

 

これが粋というものである。

常日頃から粋というものに細心の注意を払っている私にとって、

高倉健のように祝詞では多くを語らないことが

最大の美徳としているところだが。はて?

 

この結婚パーティにはたくさんの友だちが集まり、

アットホームな雰囲気に包まれ、始終笑いが絶えなかった。

十数年ぶりの再会も何の違和感のなく、

やあやあという気軽な感じで話しているのを見て、

友だちというのは本当に良いと思った。

月日を重ねれば重ねるほどに、

味わい深く、愛おしい存在になっていく。

 

君は僕の名前を呼ぶだけでいい

どこにいようと君に逢いに飛んでいくよ

冬でも春でも、夏でも秋でも

君が呼びかけてくれれば

すぐに行くよ

それが友だち

 

これはキャロル・キングがつくった曲。

たくさんの人に歌われている名曲だけれども、

ジェームス・テイラーの歌が一番好き。

少し線の細いジェムス・テイラーの歌声が、

ふだんは気弱で頼りない僕だけども、君が淋しいときや

辛いときには、いつでもどんなときでも駆けつけるからねと、

切々と歌う姿に、本当の優しさを感じてしまうからかもしれない。

 

1971年発表の「マッド・スライド・スリム」に入っています。

(店主YUZO)

12月 10, 2011 CDレビュー | | コメント (0)

2011年12月 4日 (日)

地球の裏側の儚き歌声

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12月に入ってから急に冬らしくなった。肌寒い。

今年は暖冬になるとか、温暖化が一段と進んだとか、

他愛のない酒場談義をしていたのが嘘のようである。

 

しかし地球の裏側では、これから夏を迎えようとしている。

交通機関や通信手段が発達して、

どんどん地球のサイズが小さくなろうと、

そんなのは人間が勝手に行っていることで、

この水をたっぷりと湛えた天体は、我関せず、

きっちり正確に太陽系の軌道を巡り、

北が冬の時は南は夏になり、南が冬になれば北に夏が訪れる。

 

たとえ人類が核戦争で滅亡しても、

その営みは揺らぐことなく続けられるのだ。

腕の良い職人がつくった時計のように。

 

その地球の裏側の国ブラジルに夏の終わりの風景を

一篇の詩のようにつづった「三月の水」という名曲がある。

『エリス&トム~バラに降る雨~』というアルバムに

収録されていて、すべての曲を書いているのは、

ボサ・ノヴァの三聖人、もしくはブラジルが生んだ

偉大なる作曲家とうたわれるトム・ジョビン。

「三月の雨」は一曲目に収められている。

 

歌詞の一部を紹介しよう。

 

足跡、橋、ヒキガエル、アマガエル

残された森林、朝の光

夏の終わりを告げる三月の雨

人生の誓いを心の中で

 

つい口ずさんでしまいそうな流麗なメロディに乗せて、

同じくブラジルが生んだ不世出の歌手エリス・レジーナと

少し感傷的になりながらも恋人たちが囁きあうように歌うのだ。

夏の喧騒が終わりに近づいた寂しさと物思う秋の到来を、

茶目っ気たっぷりに歌うエリスの感性の瑞々しさ。

 

今年の夏は楽しかったけれど、もう終わったこと。

でもこれから訪れる秋も、あなたと一緒ならば悪くないかも。

そんな心のうちが映し出されたエリスの歌声に、

ぼそりぼそりと優しく語り返すように歌うトム。

二人の歌に絶対的な永遠の美を感じてしまう。

 

 

長い冬が終わりを告げ春の足音が聞こえ始めた頃、

地球の裏側では、こんなに切なくも美しい曲が歌われている。

(店主YUZO)

12月 4, 2011 CDレビュー | | コメント (0)

2011年12月 2日 (金)

掟破りのジョージ・フェイム

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粋に生きることは難しい。

宵越しの金は持たねぇというような江戸っ子気質の気風の良さは、

この物が溢れかえった次代には、

かえって困難な生き方だという気がする。

 

目に飛び込んでくるのは購買意欲を駆り立てるキャッチコピーや

魅力的なパッケージに彩られていて、

所詮、いずれは物なんぞは壊れてしまうか、

こちらがこの世からおさらばしちまうんだからと嘯いてみても、

視線はずっと見つめたまま、その場から立ち去ろうとしない。

財布のなかを見つめて、

明日から給料日まで牛丼で過ごせばいいんだからと、

勝手に納得させて、ついつい買ってしまう。

 

これがいけない。

染みっ垂れていて実に粋ではない。

そもそも蒐集するという道楽は

粋とは正反対の生き方かもしれない。

しかし敢えて粋な心意気で蒐集する道を探り出すのが、

真のコレクター道楽なのかと考えた次第。

 

具体的に説明すると、自分のなかで様々なルールをつくって、

その範囲内で蒐集していくのである。

10年以上探し続けている喉から手が出るほど欲しい逸品でも、

ルールを越えていれば、きっぱり未練なく諦める。

間違って同じ物を買ってしまっても後悔しない。

セット物なら5000円まで、その他は2000円以下、

新譜は買わない、購入は一度に5枚まで、

と次々と粋なコレクター道を探るべくルールをつくっていった。

 

しかしそのルールを一度だけ破ってしまったのが本作である。

もう5年も前のこと。

世界初CD化で出るという情報を訊きつけ、

思わずアマゾンで予約してしまったのである。

 

このアルバムはLP時代は中古レコード屋の超レア盤扱いで、

うちの店はこれを持っているだぞとばかりに誇らしげに壁に飾られていた。

それが何とも羨ましく、価格を仰ぎ見るとゼロが5つも並んでいる。

当時私は中学生。

買えるはずもなく、指を咥える以外になかった。

 

しかしレア盤には惜しみなく金を出す人がいるもので、

3ヶ月も経たぬうちに中古レコード屋の壁から消えていた。

それ以来、28年ぶりの涙の再会だったのである。

 

ルールは破るためにあると嘯くどころか、

気が焦りすぎて、震える指先で何度も購入手続をミスする有様。

それでも売切にならず購入が

成立したときの至福感は忘れられない。

そして届いた日は、はしゃぎ過ぎて何度も聴き返し、

家族から白い目で見られる始末である。

 

粋に蒐集することは、実に難しい。

(店主YUZO)

12月 2, 2011 CDレビュー | | コメント (0)

2011年11月26日 (土)

ローラ・ニーロ「Gonna take a miracle」

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今日は音楽の話。

ローラ・ニーロと聞いただけで

甘酸っぱい気持ちになるのは、私だけだろうか。

 

喩えるならば憧れ慕うお姉さま。

ピアノを弾いて歌うものの人を笑わすようなMCはせず、

孤高を愛し、誰かが話しかけてもニコリと笑うだけで、

決して多くを口にすることはない。

 

きっとそのイメージはそれ以前の作品、

『イーライと13番目の懺悔』や『ニューヨーク・テンダベリー』

のモノクロを基調にしたジャケットと、

収録されている内省的な歌の数々が

そう想起させたのだろう。

 

ちょっと近づき難いけれども、

その才能には寄り添っていたいお姉さまなのである。

ある解説でローラ・ニーロを「火のように寂しい」

と評していたのがあったが、

この表現が実によく合った雰囲気を醸している。

 

そのお姉さまが普段は見せない表情で歌ったのが本作。

子供の頃にストリートで歌っていたR&Bやソウルの名曲を、

実に気持ちよく歌っていて、その歌声も力強くて美しい。

バックコーラスのラベルも好サポートしていて、

極上のブラック・ミュージックに仕上がっている。

(註・ラベルはパティ・ラベルが在籍していたグループ)

 

 

「火のように寂しい」と思っていたのに、

実は身体の中では「火のように燃えている」。

このアルバムを聴くたびに、

お姉さまが今まで見せなかった笑顔を、

自分だけに見せてくれたような気分になって、

思わず萌えとなってしまうのである。

 

残念ながらローラ・ニーロは、もういない。

47歳の若さで帰らぬ人になってしまった。

多作な人ではなかったけれども、

残していたアルバムは女性(母親)としての優しさと

歌うことへの情熱に満ちている。

(店主YUZO)

11月 26, 2011 CDレビュー | | コメント (0)

2011年11月22日 (火)

テルミン博士とブライアン・ウィルソン

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手で触れることなく演奏できる不思議楽器。

「テルミンは取り扱っていないのですか?」もしくは、

「マトリョミンありますか?」と訊かれることがある。

残念ながら楽器まで取り扱いを広げるのは不可能なので、

丁重にお断り申し上げている。

 

テルミンはロシア生まれの電子楽器で、ウィッキペデアによると

1919年にテルミン博士によって完成したとある。

1919年といえばロシア革命が起こってまだ日が浅い年、

国の体制が大変革を遂げているとぎに、

こつこつと電子楽器の研究をしていたのだから、

このテルミン博士は胆のすわった大人物か、

計り知れない変人ではないかと窺える。

 

実際、レーニンがテルミンの発明を喜んで600台を購入。

鑑賞会の後は、はヨーロッパに演奏旅行、

アメリカで販売契約まで結んだというのだから恐れ入る。

 

ただ音程が定まりにくいテルミンは曲の中で使われることは少ない。

恐怖シーンや不気味な場面の効果音として使われことが多い。

有名どころではビーチ・ボーイズの「グッド・バイブレーション」ぐらいか。

 

1966年、当時は破格の5万ドルの制作費をつかって作られた

ビーチ・ボーイズの、いやポピュラー音楽の永遠の名曲である。

作者である孤高の天才ブライアン・ウイルソンは、

この曲を完成させるために20以上のテイクを撮り、

さらに完成に至ったテイクも11バージョンが存在するという。

まさにブライアンならではのこだわりの大仕事。

おかげで見事全米チャート1位に輝いている。

テルミンはサビの部分で独特の浮遊する音が、

効果的に使われている。

 

ポピュラー音楽が日々変革を遂げていた60年代。

ブライアンがテルミンの不思議な音色に魅せられたのも頷ける。

 

さて多少強引に結論づけると、

あの何処に着地するのかわからないフワフワした音が、

大きな変革のある時代に合う音色なのかもしれない。

ロシア革命とカウンター・カルチャーの時代。

ふむ。やはりこの結論はかなり強引だな。

似ていてようで、似て非ざるか。

 

ちなみに「グッド・バイブレーション」は

ビーチ・ボーイズのベスト盤や未完の名盤

「スマイル」などに収録されています。

(店主YUZO)

 

11月 22, 2011 CDレビュー | | コメント (0)