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2020年4月30日 (木)

木の香便り

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春は去ったけれども、私たちは世界で生きています。

どんな困難が立ちはだかろうとも、生き続けましょう!

それが亡くなった方への哀悼の意になります!

 

(店主YUZOO)

 

 

 

4月 30, 2020 店主のつぶやき | | コメント (0)

2020年4月 8日 (水)

第53回紙の上をめぐる旅

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遠藤洋子『いまどきロシアウォッカ事情』(ユーラシア・ブックレット)

以前、ウォトカのアルコール度数を40度に決めたのは、周期律を発見したメンデレーエフ博士の学説というのが一般的だと書いたのだが、どうも事実は一筋縄ではないらしい。

このユーラシア・ブックレットは、ロシアを中心とした文化、芸術、経済、民族などを平易に解説していたシリーズで、ロシア、中央アジア地域を学ぶには最適な入門書だった。

残念ながら、出版元の東洋書店が倒産してしまったために、容易に手に入らなくなってしまったが、古本屋を巡れば何とか入手することができる。この本は、知り合いのロシア通との談笑のなかで、サマゴン(ロシアの自家製ウォトカ)が話題になったときに、いただいたもの。

このブックレットの一節に、メンデレーエフ博士の学説が伝説にしかすぎないと、衝撃の一文が載っている。そう発言しているのが、メンデレーエフ古文書博物館のドミトリーエフ館長だというのだから、我々の好む居酒屋談義のレベルの話ではなく、かぎりなく信憑性が高い。

 

《メンデレーエフがロシアの40度ウォッカの海の親であると、多くの人が信じているが、伝説に過ぎない。この伝説はメンデレーエフの論文がアルコール組織に関するものであったことから生じたものだ。メンデレーエフは、論文を書いているときもその後もウォッカのアルコール濃度に関しては全く関心がなかった》(『論拠と事実』紙、二〇〇四年四月)

 

メンデレーエフ研究の第一人者が、真っ向から否定しているのだから、ほぼ真実に間違いはないのだろう。

ただメンデレーエフ博士は一九世紀末に、ロシアのウォトカの製造と品質管理のために立ち上げられた技術委員会の委員長を務めた経歴があり、その功績もあってウォトカの生産が国家管理となった。

ウォトカがロシアの伝統的な蒸留酒として、世界に向けて決定づけた功労者でもある。そのような権威あるメンデレーエフ博士が研究に携わったウォトカなのだから、40度が人体にも優しい最適なアルコ―度数であると提唱しても、なんら不思議な話ではない。

むしろロシア国民の健康まで考えて、最適なアルコール度数を導き出している、偉い先生だという考えに至ったのかもしれない。

何年後かに新たな論文が発見されて、この伝説が真実に変わる時がくるかもしれないが、今の時点ではメンデレーエフ博士がアルコール度数の生みの親である説は覆されてしまった。だが私のなかでは、藪の中のままである。

 

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このブックレットは、ほかにもロシア人の一人当たりの年間アルコール消費量が載っていて、2004年は19.3リットル。

WHOが推奨するのは8リットル以下というのだから、その数値を軽々と超える消費という事実に、ロシア人がウォトカ、さらに言えば飲酒をどれだけ愛しているのか、わかるというものだろう。

ロシアの公園に行くと、ベンチの片隅で紙袋に隠したウォトカを大事に呑んでいる鼻の赤い男を見かける。家で呑むことを禁止されているけれども、吞まずにはいられない。

新緑の頃は、初々しい若葉が芽吹いているのに、私は年を追うごとに老いていく。

秋になれば、あの厳しい冬の足音が扉の前まで聞こえてくる。

家族にも愛想をつかされた。ウォトカだけが心の友。

そんな悲哀が赤鼻の男を苛んでいる。

それゆえにロシア人男性の平均寿命は60歳程度と、先進国のなかで驚くほど低い。身につまされる話である。

 

ほかにも興味深い話として、古今のロシア指導者で、国内の生産性を高めるために禁酒法を発令した者は、ロシア国民の反感を買い失脚するという定説。ボリス・ゴドノフしかり、ニコライ二世しかり、ゴルバチョフもしかり。

ロシア文化と生活を知るうえで、ウォトカ抜きでは語れない。

またロシア人と仲良くなるには、ウォトカが仲介したほうが自然体である。

その国民的な蒸留酒について、少しでも知識を持てば、さらに会話が弾むというもの。近々ロシア人と商談をしなければならない貴兄。

古本屋を巡って、探されては如何だろうか。

 

(店主YUZOO)

4月 8, 2020 ブックレビュー | | コメント (0)