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2020年3月12日 (木)

ウラジオストック慕情(下)

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人いきれ。売り声。活気。喧噪。混沌。

市場の雰囲気が好きである。

外国旅行の愉しみは、市場に尽きるといっても過言ではない。

ウラジオストックの市場は、港近くで開催されていて、生鮮食品、黒パン、ソーセージやハムといった加工食品テントが並び、ウラジオストック市民の台所を支えているのか、人出が多く、次々に欲しい食品を買い求め、両手いっぱいに袋をかかえている。

 

ひとつひとつの店をゆっくりと見ていると、売り子が威勢のいい声で、安いよ、安いよと、自慢の品物を私たちの目の前に差し出してくる。

ただ一週間分の食材を基本としているのか、どの店も量が多過ぎて、一介の旅行者では食べきれない。

試食すれば、半ば強引に買わされる羽目になるので、足を止めることは憚られる。

今回は二泊三日の旅行ゆえ、ハムを一本だけ買ったとしても、明日の朝までハム三昧の食事になってしまう。

 

もうひとつウラジオストックで眼を瞠るのは、朝鮮半島に近いので、売り子は同じモンゴル系の顔が多いこと。

味噌を売っていれば、キムチ専門店も出ている。

ちなみに街中を走っているのは、90%近くは日本車だ。

ほとんどが中古車で、日本では久しく見られなくなった、昔の名車が現役として颯爽と走っている。

社名ステッカーもそのままに、ヤマト運輸もいれば、幼稚園のバスも走る。

市場横には西原商会と書かれたトラックが止まっていた。

自動車の群れをぼっと眺めているだけでも、時間が過ぎていく。

旅行会社は、日本に一番近いヨーロッパと宣伝しているものの、裏腹にアジアの体臭をきつく感じるのが、ウラジオストックの面白いところ。

 

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市場をひと通り散策した後は、ロシア名物バーニャに向かう。

バーニャとはロシア式のサウナ風呂のことで、ロシアの重要政策はバーニャのなかで、決定されると言われるほど、信頼関係を築く社交場、裸の付き合いが大原則な大衆浴場というべき場所。

日本の狭いサウナ風呂とはちがい、公共のバーニャは、ホテルのラウンジぐらい広く、プールやダイニングテーブルが併設されている。

しかも貸し切りで利用できて、ウォトカやビール、酒の肴を持ち込んで、時間がゆるすかぎり、吞めや歌えや、汗かけやと、実に精神と身体に良い。今回は男ばかり4名で、郊外のバーニャを借りた。

 

早速、バーニャに入ったのだが、なぜかロシアVS日本の様相を呈して、玉のような汗をだらりと垂らしながらも、誰もが口を真一文字に結んで、なかなか出ようとしない。

日本男子たるや、蒸し風呂ごときで、弱音を吐いてはいけないと、身体を火照らしてアレクサンドル氏を横目に、とにかく我慢。さらに我慢。

時間にして10分を超えた頃、チェリパシカ氏が最初に音を上げると、堰を切ったようにバーニャから飛び出し、プールにダイビングした。

ゆらゆらとラッコのように水の中を漂い、芯から凛と熱くなった身体を冷ます。

その後は缶ビールを一気吞み。極楽と浄土が同時におとずれる。それを1クールとして4回ほど繰り返すと、バーニャで血行がよくなったせいか、ふだんより酔いが回るのが早く、寒暖の差がわからなくなり、朦朧としてきた。

果たして、本当にバーニャは健康に良いのだろうか。そんな疑問が頭をよぎる。

結局、バーニャには2時間ほど滞在し、健康体になったのか、酔態になったのか、区別がつかなくなった身体を引きずって、ホテルに戻った。

 

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ウラジオストックの1日は長い。夜になると、街の中心部へと繰り出し、ウォトカによる迎え酒。

酔漢はバカと同義語である。

身体が死んだとしても、魂で呑んでいるにちがいない。

気がつけば、夜中の2時まで酩酊するまで呑み続けていた。

次の日、海より深い猛省と胃の痛みが、身体を苛んだのは、言うまでもない。

ウラジオストックの思い出は、とどのつまりウォトカの味と言えようか。

日本で呑むウォトカとロシアで呑むウォトカは、空気がちがう。

新しく航路ができた今、ぜひ一番近いロシアに味覚と酒を求めて旅立たれてはいかが。

 

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※ウォトカのお勧めは「ルースキー・スタンダルト」です。

 

(店主YUZOO)

 

 

 

3月 12, 2020 店主のつぶやき |

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