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2020年3月 5日 (木)

ウラジオストック慕情(中)

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ランチはウラジオストックで有名なレストラン「ノスタルギア」で、ロシア家庭料理を愉しむ。このレストランは、全ロシア家庭料理コンテストで見事に1位を獲得した店だと、ローマさんとチェリパシカ氏が、自身の名誉のように自慢するので、想像の輪がアドバルーンのごとく膨らんでくる。ネットで調べてみると、ウラジオストックを訪問したら、必ず行くべきレストランであり、ローマに行ってトレビの泉に行かないようなものである。

店内に入ると、その名声に恥じないようなシックな内装とアンティークな調度品が並び、中世の貴族の屋敷を思わせる。

 

いつもの買付旅行だと、コンビニの軽食コーナーのような簡素な店で、ペルメニやピロシキ、ボルシチで済ましてしまうのが日常だっただけに、この内装だけで心が車海老のように踊る。

メニューも分厚い。

ファイルに挟まれた手書きメニューとはちがう。

深くため息をつき、心が落ち着くのを待つが、元来、吞み屋といえばホルモン焼き、レストランと言えば町中華、という食生活が煮汁のように染み込んでいるので、なかなか平常心を保つことができない。

結局、食べ慣れたペルメニとオリヴィエサラダ、それに「ノスタルギア」の看板メニュー、ビーフストロガノフを注文。ローマさんとチェリパシカ氏は、それ以外にもカツレツや海鮮料理を頼み、私の貧乏性の胃袋を笑う。

 

「せっかくウラジオストックに来たんだ、ステーキを1プードぐらい食べたらどうだい?

1プードって?

「ロシアの重量をはかる単位で、今だと16キロぐらいの重さだ」

16キロの肉なんて、1年分の食べる量だよ」

「日本人の胃袋は、ウサギ並みというのは嘘じゃないんだな」

「その喩え、大食漢のウサギに悪いね」

 

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そんな他愛ない会話をしながら、ビーフストロガノフをスプーンですくう。

生クリームが溶け込んでいるのか、濃厚な味わいが舌の上をとろりと転がっていく。

そのなかを赤ん坊の拳大の肉の塊と玉ねぎが皿のなかを、所狭しと絡み合っている。

日本の淡白なクリームシチューを想像していてはいけない。

濃密、濃艶、豊潤、強靭、豊満な舌触りは、草食系民族である日本人には、脂質が強すぎて、皿一杯分を食べ終えただけで、ずっしりと胃のなかに鎮座してしまい、ほかの料理にまで手が回らなくなる。

 

ロシアは日本に比べて、サワークリーム、チーズ、ヨーグルト、ケフィアと乳製品の種類が多いのは、端から端まで並ぶスーパーマーケットの棚を思い出せば、その圧倒的な量に納得がいく。

乳製品とマヨネーズですべての栄養を賄っているという感じである。断っておくが、「ノスタルギア」はウラジオストックを訪問したら、ぜひとも寄っていただきたい名店。

ただ食習慣のちがいが脂質でこってりとした味わいが、胃弱な草食ウサギには、ロシアの様々な料理を愉しむには、相当な覚悟がいると言いたいだけである。

私はビーフストロガノフを完食しただけで満ち足りてしまった。

 

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ちなみにペルメニはロシア版水餃子。

中国発祥の水餃子は、いまや形を変えて、それぞれの地域で民の舌に合わせて、独自に発展しているだけに、とびきり美味いとは思わない。

ペルメニにかぎっては、日本の味のほうが私には合う。

 

食事のあとは、ウラジオストックっ子自慢のルースキー島までドライヴ。

連絡橋の長さに驚嘆し、ウラジオストック市の風光明媚に眼を瞠る。

ひと通り観光地を巡った後、待望の夕食となったのだが、残念ながら何を食べたのか覚えていない。

たぶん「ノスタルギア」と比べたら、幕下レベルのレストランに入ってしまったのだろう。

 

明日は、港近くで開催されている朝市。

市場好きは、眠る時間さえも惜しい。

子どものように明日着る服を枕元に並べて、眠りにつく。

 

(店主YUZOO)

 

 

 

3月 5, 2020 店主のつぶやき |

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