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2020年2月28日 (金)

ウラジオストック慕情(上)

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5年前にウラジオストックに行った時の話を少しばかり。

当時は成田空港の最終便に近い出発時刻、2時間半だけ機上の人になり、夜中に到着といったスケジュールだった。

当然ながら、夜間に空港に到着するので、市街地に行く交通手段はなく、タクシーを手配するしかない。

しかもアジアの空港みたいに老若男女が入り乱れ、白タクシーの手配師、怪しげな物売り、片言の日本語、愛想の良い担ぎ屋、脂でムンした匂い、飛び交う怒号などなく、静寂に満ちていて、ローカル線の無人駅に佇んだような気分だった。

空港は混沌としたほうが旅人は安心する。

 

一緒に行った旅友チェリパシカ氏が、前もって友達のローマさんに迎えに来てくれるように頼んでいたので事なきを得たが、この便に同乗していたバックパッカーの何人かは、がらんとした到着ロビーを見て茫然とするしかなく、仕方なくベンチに横になると、翌朝に列車が動き出すまで待つしかなかった。

空港は市街地からかなり離れていて、1時間ぐらいかかったと思う。

ホテルのチェックインを済ませて、何か食べようと街へ繰り出してみたものの、空いているのはバーやカフェばかりで、テーブル席に陣取っているのは、ウラジオストックから飛び出して都会で働き口を求めたい若い男女か、今宵客をとることのできなかった娼婦が退屈しのぎに煙草の煙をくゆらせている姿だった。

 

ロシアは広い。

モスクワのような喧噪もあれば、スズダリやセルギエフ・パッサードみたいな静寂もある。

ウラジオストックの印象は、打ちひしがれた寂しき港町と、ビールの定番、バルチカを飲みながら思った。

 

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次の日は土曜日だったので、郊外で開催されている蚤の市へと足を運んだ。

私の場合、旅行の愉しみは、市場をぶらぶらと冷やかしながら巡ること。

整然とした博物館のような市場よりも、得体のしれない物や食材が雑多に並んでいるほうが、胸がざわめき、私の性に合っている。

ウラジオストックの蚤の市は、公民館をつかった小規模な市場で、古着や食器を中心に、ロシアならではの壊れたドアノブ、錆びついた工具や鉄板、湿気を含んだ古本などが並んでいた。

ただモスクワのように公園全体が市場になっているような規模ではない。

腰をおろし丁寧に一品ずつ手に取ってみたが、2時間もあれば終えてしまう。

しかしタイヤが外れたミニカーなんて、誰がすき好んで買うのだろうか。

 

ちなみに古いマトリョーシカを探したのだが、工芸品と呼べるものは一切ない。

生活雑貨が中心なので、掘り出し物を目当てに足を運んでも徒労に終わるだけなので、無理にお勧めはしない。

つまり何も買うものがない。

K

 

少し落胆気味の私を気遣って、ローマさんがウラジオストックを一望できる鷹ノ巣展望台に行こうという。

ガイドブックでも紹介されているので、讃岐の金刀比羅宮、長崎の稲佐山、函館の展望台のような立ち位置なのだろう。

展望台に向かう車が何台も列をなしている。

この車の行列、展望台に到着してからわかったのだが、結婚式を祝う参列者が同乗していた。

市内の有名スポットで記念写真を撮影してから、ゴーリカ、ゴーリカと囃し立てキスを促すと、新郎新婦の熱い抱擁とキス、トランクに山と積んだ酒類をラッパ飲みして、次のスポットへ移動というロシア式披露宴に鉢合わせ。

ご機嫌になった参列者のひとりが私たちのところに来て、ビールを片手に一緒に祝ってくれと言う。

 

「ゴーリカ!!ゴーリカ!!」

苦い、苦いという意味で、ふたりの熱いキスでこの苦い世界を甘い色に変えてくれよという、結婚式での定番の言葉。

日の出る国からやって来た私である。

世界を愛で満たすことなど、千羽鶴を折るより簡単である。

 

酒の力で陽気なロシアの人々と一緒にゴーリカ、ゴーリカと歌うように囃し立てた。

にこやかに微笑みキスを交わす若いふたり。

愛なき世界は、ピーター&ゴードンの歌だけで十分である。

ただ残念なことに、天候に恵まれず霧が立ち込めていて、金帯橋をバックにした絶景でのスナップにはならなかった。

余計なお世話だが、ふたりの前途が危ぶまれた。

 

 

※晴れた日の金帯橋のスナップは近畿ツーリストのHPより転用

(店主YUZOO)

 

 

 

2月 28, 2020 店主のつぶやき |

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