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2019年9月12日 (木)

第281回 耳に良く聴く処方箋

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スマイリー・ルイス『アイ・ヒア・ユー・ノッキング』(インペリアル/オールディズ)

今宵はニュー・オリンズの重鎮、スマイリー・ルイスを聴きながら一献。
このスマイリー・ルイスは50年代に数多くのヒット曲を放ち、同郷のファッツ・ドミノと肩を並べるほどの人気を博したというが、今や忘れられた存在。
20年ほど前にCD4枚組のアンソロジーが発売されたものの、それ以降はまったくスポットライトを浴びることなく、満足に再発も出ないままに、ひと握りの好事家の記憶にだけ息づいている、ツチノコのような存在になっている。
いと哀し。

何を隠そう、私は長年この4枚組CDを探し求めていたクチで、実際、スマイリー・ルイスはニュー・オリンズの編集盤で数曲聴いたぐらい。
好事家どころか、勝手に耳の内で音を想像している妄想家なのである。
芸名が「笑顔のルイス」というだけで、その屈託のない人柄がしのばれるではないか。
そして嬉しいことに、帰宅時にふらりと寄ったレコード屋で、オールディズ・レコードが再発した1枚に巡り会えたのである。
快哉!

このアルバムには、ボーナス・トラック4曲をを含めて全16曲が収められている。
1曲目は50年代らしい三連のピアノが鳴り響き、スマイリー・ルイスのオヤヂ声が心地よい「The bell are ringing 」。
途中で入るアルビィン・タイラーと思われるサックス・ソロの下卑た下水道のような音色で、1ラウンドにしてノックアウト。
この突っ込み気味の演奏が、50年代に全盛期を迎えていたニュー・オリンズのサウンド。
のちのロックンロール誕生に多大な影響を与えたのも、頷ける。

基本的にはブルース・コードの進行で、ゆったりとしたリズムを奏でるのを得意としているので、この手の音楽を聞き慣れない若造には、ワンパターン、どれも同じ曲に聴こえてしまうにちがいない。
しかし何十年も音楽にどっぷりと漬かった塩辛い耳には、すべての曲がそれぞれに異なった輝きを放ったように聴こえるのだよ。

大らかに歌い上げるスマイリー・ルイスを盛り上げる、デイヴ・バーソロミュー楽団の陽気なグルーヴ感。
そしてソロが回ってきたら、俺こそニュー・オリンズ一番のサックス奏者だと、激しく主張するホーン陣。
50年代のニュー・オリンズでは、夜な夜な酒場で、こんな演奏が繰り広げらていたのだろうと想像すると、この収録された16曲は一瞬にして、我が家をバレルハウスに変え、この古き良き時代へと誘ってくれるのである。
これが本来の音楽の愉しみ方なのだよ、若造くん。ワトソンくん。

と言うわけで、今宵は御機嫌な夜を過ごしている。
最後を締めくくるのは名曲「Shame,Shame,Shame 」。
編集も憎いね。


(店主YUZOO )


9月 12, 2019 店主のつぶやきCDレビュー |

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