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2019年7月 1日 (月)

ダニロヴォ村のガラス工場

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ガラスの可愛らしいオーナメントをご存知だろうか。

日本ではあまり馴染みがないが、ヨーロッパでは古くから作られていたようで、アンティークなものは高値で取引されており、伝統工芸品のひとつに数えられている。

ロシアにもその伝統は根付いており、今回訪問した工場も創業から100年近く経つ老舗。

ほぼクリスマスオーナメントのみを、延々と作り続けている。

 

その製作工程で目を瞠るのは、ほぼハンドメイドで作られていること。

まず長いチューブ状のパイプをバーナーで熱して柔らかくすると、引き伸ばして、素早く内側から吹く。

するとロシアの教会のような球状に角が突き出たような形へと変わる。

その手際の良さに思わず唸り、ほぼ均等な大きさになっているに溜め息をつく。

熟練の為せる技である。

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その球状になったものは別室に運ばれ、液体の入った缶の中へドブ漬けして、赤、青、緑、紫と鮮やかな色がつけられる。

かなりシンナー臭の強い作業場なので、作業者の健康を案じてしまうが、手袋もマスクもせずに、赤く染まった指で嬉々として応じてくれるので、どう判断してよいのかわからない。

そういえば、マトリョーシカのニス仕上げも素手で行なっていたのを思い出した。

おそるべし。

 

次に通されるのが色のついたガラスに絵付けをする部屋。

こちらは熟練工が黙々と素材をつくっている雰囲気とはちがって、明るく賑やかで春先の森のようである。

おしゃべりを交えながら、ガラスの球を美しく装飾させていく。

マトリョーシカやサンタクロースといった形のあるものには、命を吹き込んでいく。

若さに満ち溢れた娘さんたちに、描かれたマトリョーシカたちは、なんて幸せなのだろう。

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ただこのような颯爽と働いている工場にも、暗い歴史が横たわっている。

ソビエト時代はガラス職人100人、絵付け師400人と多くの人が働いていて、工場も二ヶ所あった。

しかしソビエト崩壊とともに、工場は操業停止。

一度その栄光の歴史に幕を閉じたのである。

その後、ひとりのガラス職人と絵付け師4人の人の有志が集って、細々と操業を再開。

樹々が年を追うごとに幹を太らせるように、今では20名を超える人が従事するようになって、農業以外に主な産業がないダニロヴォ村を代表する工芸品となった。

橋の下をいくつもの水が流れるような歴史である。

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今回、未知なものを買い付けると宣言したひとつが、このガラス工芸品である。

繊細なガラス細工ゆえ、破損もなく無事に持ち帰れるか、神のみぞ知るが、10点ほど買付した。

たぶんこの工場に最初に訪れた日本人の自負として、このハンドメイドの素晴らしさを、しっかりと伝えなければならない。

そんなことを、ふと思ったら、久しぶりに武者震いが出た。

 

(店主YUZOO 

 

7月 1, 2019 海外仕入れ店主のつぶやき |

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