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2018年10月 9日 (火)

第48回 耳に良く効く処方箋




オーティス・ラッシュ『ザ・コブラ・セッションズ1956-1958』(コブラ/P-vine)

オーティス・ラッシュが亡くなった。
ここ数年は糖尿病を患って体調が優れないと言われていたから、とうとうこの日が来たかと腹は決めていたものの、訃報を耳にしてしまうと、どうにもやるせない。
颱風が接近しているのを理由にして、夕方早々から弔い酒を片手に呑んでいる。
もちろんオーティス・ラッシュが遺した一連の作品を肴にして。


オーティス・ラッシュの代表作といえば、ブルースの情念が熱いマグマとなって噴き出した、コブラ・レコード時代ということに異論の余地はないだろう。
デビューして間もない22才の若者が、ここまでブルース魂を搾り出してことに驚愕し、天賦の才能が成せる表現力という以外、何ものでもない。


しかしデビューで強烈な一撃を与えてしまったことは、不幸でもあった。
以後の録音については、覇気がないだの、気紛れだの、厳しい評価がつきまとって、正統な評価が得られなくなってしまった。
だがこの不運もオーティス・ラッシュが背負いこんだブルースと言えなくもない。


今回、順を追って聴いていくと、コブラ以降は録音機会に恵まれず、言わば飼い殺し状態。
移籍したチェス・レコードの「So many roads so many trains 」は渋めのスロー・ブルースでオーティス・ラッシュらしさが出ているものの、次に移籍したデューク・レコードの「Homework 」はR&B調の当時の流行を取れ入れたスタイル。
出来栄えは悪くないが、どちらもヒットとは縁遠かった。


音楽シーンがブルースからロックンロール、R&Bへと移り変わる時代に、レコード会社がオーティス・ラッシュの性根の座ったブルースを上手くプロデュースできなかったことが、この不運に繋がっている気がする。
オーティス・ラッシュ自身も器用な人でない。
音楽シーンに合わせて、自身のスタイルを変化させるなんて無理な相談である。


しかし近年、オーティス・ラッシュの未発表音源が発表されるなか、傑作ライブ盤『オール・ユア・ラヴ〜激情ライヴ1976』を聴くと、約束事の多いスタジオ録音よりも、瞬時にブルース魂を昇華できるライヴのほうが、性に合っていたのだろうと思う。
バック・バンドに恵まれて、自身も気分に乗っているときは、桁違いのパーフォマンスを見せつけてくれる。


1995年に日比谷野音でオーティス・ラッシュの雄姿を観た時もそうだった。
夕暮れ時の周囲のビル郡が紅く染まるなか、マーシャル社のアンプに直接シールドを突っ込み、バック・バンドの倍以上の音量でギターを響かせ、振り絞るように歌う姿に、完全にノックアウトされ、不覚にも涙が出てしまった。
ひとつ、ひとつのギターの音が、唸るような歌声が、オーティス・ラッシュが背負いこんだブルースであり、人生が凝縮されていたからだ。
ブルースはその人の生き様、そのものが音楽だと思った。


年が過ぎ行くにつれ、好きなミュージシャンが天に召されていく。
安らかに。

(店主YUZOO)

10月 9, 2018 店主のつぶやき, CDレビュー |

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