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2018年6月 1日 (金)

買付人の食生活




いよいよ帰国の日が来た。
ある方面からは、ロシアではマトリョーシカや工芸品を愛でて、夕餉はロシア料理に舌鼓を打っていると思われている節があるが、それは根も葉もない風説。
実際は、毎日財布の中身と相談しながら切り詰めた生活を送っている。
移動手段は地下鉄、バス、路面電車といった公共交通を利用し、そこから現地まで徒歩で行く。
自慢ではないが、ロシアに来てから一切タクシーを利用したことはない。


買付人は悲しいことに、贅沢は敵、欲しがりません勝つまでは、という旧日本軍の思想が未だに根付いている職業である。
ここで贅沢しなければ、あと2つマトリョーシカが買えると考えてしまう哀しき性根の持ち主なのである。
一度でもいいからキエフ風カツレツやビーフストロガノフを心の底から堪能し、グルジア・ワインに酔い痴れたいのだが、これは叶わぬ儚い夢である。




ではどのようなところで食を満たしているかというと、ロシアのファーストフード、「クローシュカ・カルトーシュカ」か「テレモーク」の安セットを頼むことにしている。
「クローシュカ・カルトーシュカ」はロシアの主食であるジャガイモをオーブンで焼いたものが定番の店で、「テレモーク」はボルシチやブリヌイなどロシア家庭料理をメニューにした店。
これを食してロシア料理を語るのは間違いで、回転寿司を食べた後に江戸前寿司を論ずるようなもの、あくまでもファーストフードの域を超えない味である。
ただ一食につき500円程度住むのは、財布には嬉しい。


また仕事終わりの一杯にしても、スーパーで買ってきたハムやチーズを肴とする慎ましい宴。
鮮度の良い刺身や焼トン串があればと思う時もあるが、それは空想上のメニューとして頭のなかで食し、缶ビールをグラスに傾け、良しとしている。
ロシアのビールは様々な銘柄があり、また隣国チェコやドイツ産のものも幅を利かせているが、今回は浮気をせず「バルチカ」と「トリー・メドベーチ(三匹の熊)」の二枚看板のみで、1日の締めとした。




「バルチカ」も「トリー・メドベーチ」も日本のビールと変わらないドライで少し苦味のある味で、ドイツビールのようにずっしりとした重みはない。
飽きのこない、締めに相応しい味である。

ただ最期の晩ぐらいは、少し違う銘柄を試そうと、ペットボトルに入った自家製ビールなるものを買ってきた。
どの家で作られたのかは計りかねるが、スモーク臭が強い、スコッチウィスキーをホッピーで割ったような一癖ある味。
ハムを肴にすると良い塩梅だが、日本から持参した柿の種だとスモーク臭が勝って、ビールの気軽さがない。




やはり浮気がいけなかったのか。
味覚を刺激するような主張の強いビールは、気の強い女性と同様に、私には合わないという結論に至った次第。
こうして買付最後の貧しい晩餐は幕を閉じた。

(店主ЮУЗОО )

6月 1, 2018 店主のつぶやき, 海外仕入れ |

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