« 第45回 耳に良く効く処方箋 | トップページ | 第44回 紙の上をめぐる旅 »

2018年5月 2日 (水)

第43回 紙の上をめぐる旅




高橋源一郎『ぼくらの民主主義なんだぜ』(朝日新書)


高橋源一郎の本を読むのは『ペンギン村に陽は落ちて』という、どう解釈して良いのか判断できかねる小説以来2冊目。
よって、熱心な読者ではないし、思い入れ過ぎによる偏向した読み方もできない。
結論から言うと、民主主義とは何だろうと、市井の人々の目線で考えられる、なかなかの良書である。


民主主義は人類が到達した高度な思想だとは、考えていない。完成されたものではなく、色々な不備や欠陥がある発展途上の思想だと思っている。
個人の自由、平等、権利に重きを置きながらも、その解釈は地域、文化、歴史、風習、強いては男女間によっても異なるだろうし、多種多様な価値観があるなかで、国家としては一番最適な決定を選択しなければならない。


発展途上である以上、常に緊張感をもって、為政者は国民の大多数が納得する、より良い方向へと駒を進めていくべきもの。


学生時代に受けた講義で、憲法学者の古関彰一教授が「民主主義とは何事決まるのに、一番手続きが面倒な国家体制です」と言ったのを未だに覚えている。
スズメの涙ほどの思考力しかないボンヤリした私でも、この言葉は常に心の隅にあって、社会人になった今でも、会社や地域で決め事がある度に、パブロフの犬のように条件反射として反芻してしまう。
それほどまでに私にとって強烈な一撃だった。


それならば、一個人として何をしなければならないのか。
それは周囲やマスコミに流されない自分自身の意見を持つことであり、反面、対峙する意見にもしっかりと耳を傾ける寛容さが、必要なのだと、この呑んだくれオヤジは考える。


いみじくもサルトルがアンガジェという言葉で、社会へのコミットを促したように、偶然にもこの国に生まれてしまった以上、積極的な社会参加や異議申し立てを自身の意見として持つことが、この国が堕落していかない唯一の手段であると思う。
ちなみに今宵は、それほど酒はすすんでいない。


この本の題名のような『ぼくらの民主主義なんだぜ』という国家を、権利を、個人を身近な問題として捉える意識が、この国に生きる者として必要だと信じている。
国家なんて、国民が自ら口を閉ざしてしまえば、いくらでも為政者の好きな方向に突き進んでしまうのだ。


「民主主義とは何事決まるのに、一番手続きが面倒な国家体制です」という言葉を信条としている者として、その思いは揺るがない。

(店主YUZOO)

5月 2, 2018 ブックレビュー, 店主のつぶやき |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/184818/66676241

この記事へのトラックバック一覧です: 第43回 紙の上をめぐる旅:

コメント

コメントを書く