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2018年4月21日 (土)

第44回 耳に良く効く処方箋




エリス・レジーナ『サンバ,エウ・カント・アッシン』(フィリップス)

ブラジルに歌の上手い歌手は数多くいるけど、エリス・レジーナだけは別格である。
歌姫などという安易な表現では、その才能と個性を言い表せない、絶対的な存在である。
最初に聴いたのは、エリスを代表する名盤『イン・ロンドン』。
バックを務めるミュージシャンの超絶な演奏力に舌を巻いたが、そのタイトな演奏を従えて、抜群のリズム感と表現力で歌うエリスの姿に、鮮やかにノックアウトされたのである。


鳥のように軽やかに、どこまでも自由に、歌声と声量を思うがごとく操り、取り上げた曲をエリス流に創り上げてしまう手腕は、アレサ・フランクリンを思わずにいられなかった。
神に選ばれし歌声を持つ者だけが、辿り着ける高みである。
『イン・ロンドン』を聞き終えた時の幸福感は、昨日のことのように覚えている。


このアルバムは、エリスが本格的にキャリアをスタートさせた、フィリップス・レコードに移籍してからの1枚目である。
それ以前にも数枚アルバムを発表しているのだが、エリスの才能に見合うだけの曲とプロデュースが至らず、消化不良に陥っているものばかりだった。
その辺りもアレサと一緒で、CBSからアトランティック・レコードに移籍して、一気にその才能を開花させた経歴も似ている。


このアルバムでは、ボーナス・トラックと合わせて、13曲中4曲、当時新進気鋭の作曲家エドゥ・ロボの作品を取り上げている。
エドゥのアフロ・リズムを取り入れたビートの強い曲調は、エリスの才能に馴染んだのだろう。
自分のためにエドゥが作曲してくれたと確信しているかのように、自由奔放にイマジネーションが向くままに歌い、エリスらしい世界観を創り上げている。
エドゥの曲と出会えたことは運命的で、キャリアの始めにの段階で、この出会いはターニングポイントとなったと思う。


アルバムの題名を訳すと「サンバ,私ならこう歌う」。
ジャケットのドヤ顔といい、そう言い切る自信に、その後、国民的な歌手への道を昇りつめる歌手になるのを、暗示しているようである。
まだ20歳を迎える前の作品である。
才能に満ち溢れた人は、末恐ろしい。

(店主YUZOO)

4月 21, 2018 店主のつぶやきCDレビュー |

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