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2018年4月20日 (金)

第43回 耳に良く効く処方箋




マリア・マルダー『オールド・タイム・レディ』(リプライズ)

先日、紹介したジェフ・マルダーの相方。
コンビ解消後の翌1973年に、早くもこのソロ・アルバムを発表している。
交流ある音楽仲間が共通しているせいか、エイモス・ギャレット、クリストファー・パーカーが参加。
またライ・クーダー、クラレンス・ホワイト、ドクター・ジョン、さらにサザン・ソウルの重要人物スプーナー・オールダムがピアノで参加と、こちらもジェフと同じく豪華メンバーを揃えている。


題名通り、古き良きアメリカの香りが漂う、ご機嫌なナンバーが収められ、南部の安酒場のステージを見ているようで心地よい。
しかも曲調もバラエティに富んでいて、ダン・ヒックス調小唄あり、ニューオリンズ風R&Bあり、カントリー、ジャグとアメリカのルーツ音楽というべきスタイルが、キラ星のごとく詰まっている。


このアルバムが名盤と呼ばれる所以は、ヒットした「真夜中のオアシス」が収められていることもあるだろう。
アルバム内では異質の光を放っている曲で、都会的に洗練されたサウンドをバックに、軽やかなマリアの歌声が絡む。
そして流麗なフレーズが印象に残るエイモス・ギャレットのギター・ソロ。
ヒットしたのも頷ける名曲である。


ただこの曲だけで、あとは埋め合わせの駄曲だと、くれぐれも短絡的にお考えならないように。
少し毒気のある見方をすれば、この曲はアルバムのなかでは浮いている、空気の読めない自己主張の強い子と言えなくもない。
生徒会長にならないと、機嫌を損ねるタイプ。
アメリカの古き良き音楽を感じないのである。


たぶんこの曲だけは、アルバム制作とは別に、シングル盤用として先に作られたのではないのだろうか。
大ヒットしたおかげで、アルバムを売る為に、少しばかり毛色が違うが収録してしまおうというレコード会社の思惑が、見え隠れする。

個人的には、ドクター・ジョンのニューオリンズ臭がむんと漂うピアノが嬉しい。
このアルバムでは数曲に参加し、さらにホーン・アレンジを担当して、オールド・タイムを具現化するのに一役買っている。
ベスト・トラックは、ピアノが前面に出た「Don’t you feel my leg 」。
ドクター・ジョンのピアノに導かれて、マリアはニューオリンズの歌姫になったかのように、エッジの効いた歌唱を聴かせてくれる。


このアルバムが何度聴いても飽きないのは、マリアの歌手としての才能と個性があるからこそ。
この澄んだ清らかな歌声が、世間の荒波に飲まれて、荒みきったオヤジの心を、どれだけ癒してくれただろうか。
つい金曜日の夜に聴いてしまう。
胃もたれしない身体と耳に優しいアルバムである。


(店主YUZOO)

4月 20, 2018 店主のつぶやきCDレビュー |

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