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2018年4月16日 (月)

第41回 耳に良く効く処方箋




リル・リンドフォッシュ『たった一人のあなた』(ポリドール)

完全無欠のジャケ買いである。
清楚で凛々しい顔立ちの娘が、微笑むわけでなく、何かを伝えたいわけでなく、じっとこちらを見つめている。
アイドルのつくられたグラビアの笑顔よりも、こういう意味深な表情の方が、いろいろと想像力を掻き立てられて、エロティシズムを感じる。
青春をはるかに昔に置き忘れたオヤジは、普通とは違うものに、ときめいてしまうのである。


発表されたのが1967年。
「夢見るシャンソン人形」でヨーロッパ中の男を虜にしたフランス・ギャルと同時代ということも後押しして、300円を払い、我が家に連れて帰ることにした。
この手のジャンルは需要が低いのか、だいたい中古レコード屋の片隅に置かれ、タダ同然の値段しかつかない。
掘り出し物が潜んでいる穴場コーナー。
私はワンコイン・ジャンルと呼び、好んでエサ箱を漁っている。


肝心の内容はというと、映画音楽やボサノヴァのスタンダードといった曲を中心に組まれている。
オープニングはフル・オーケストラをバックに歌われる「禁じられた遊び」。
元はギターの練習曲で歌詞がついていないのだが、哀愁を帯びた美しい曲調のため、世界各地で独自に歌詞がつけられて、愛唱歌となっている。
ちなみに日本でも歌詞がついたものが、東京放送児童合唱団が歌っているので一聴を。
YouTube で聴けます。
このスタンダードを、リル・リンドフォッシュは、アイドル風に舌足らずにコケティッシュな魅力で迫るという姑息な手段は取らずに、堂々と歌っているのが潔い。


さらに映画『いそしぎ」の主題歌と続き、注目はセルジオ・メンデス&ブラジル66が世界的に大ヒットさせた「マシュケナダ」。
原曲のポルトガル語ではなく母国フィンランド語で歌われていて、英語とドイツ語が掛け合わさったような言葉の響きが新鮮で、今まで口にしたことのないエスニック料理を味わった時のように、そう簡単に納得しない頑固な耳も嬉んでいる。


13曲目はボブ・ディランの曲で、邦題は「ほっといてよ」。
そんな題名の曲があっただろうかと、頭を縦に横にとひねったが、該当する曲が思い当たらないし、歌詞から推測しようにもフィンランド語では、取りつく島もない。
アレンジもお洒落な北欧アイドル・バージョン(?)に変えられていて、ボブ・ディランの片鱗もない。
微かに原曲を感じるメロディから「Don’t think twice,It’s all right 」だと踏んでいるが、如何だろうか。


全曲を聴いて思うには、リル・リンドフォッシュは世界中のヒット曲やスタンダードを歌いながらも、一貫しているのは、すべてフィンランド語で歌っていること。
今でも第一線で活躍しているというから、その要因は、徹底した母国愛、世界市場をターゲットにしない姿勢にあるのではないかと、勝手に邪推。
それともフィンランドにも、漣健児のような天才的な訳詞家がいたのだろうか。


60年代洋楽アイドル好きは、ぜひ揃えておきたい1枚。


(店主YUZOO)

4月 16, 2018 店主のつぶやき, CDレビュー |

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