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2018年3月 7日 (水)

第8話 一生に一度はお伊勢参りの旅





1軒目。
英虞湾で獲れる的矢牡蠣は、三重県が推すブランドで、その身は小粒だが、栄養分が豊富なリアス式海岸で育っただけに、他のよりも甘みが強い。
また紫外線を使った独自の殺菌方法で知られ、世界一安全な牡蠣とも言われている。
お店は座敷が4卓ほどしかないこじんまりとした店。
先客は地元の同窓会で賑わっている。

お店の看板である的矢牡蠣をと刺し盛を注文し、最初はお決まりのビールという名のサイダー。
すぐに地酒といきたいところだが、何事も急いてはいけない。
刺し盛が運ばれてこないことには、地酒の登場はないのである。
自論だが、地酒は郷土料理と新鮮な魚介類に合わせて作られていると思っている。
外房ではなめろうの味噌に合わせてキリッとした辛口の酒が多く、富山では寒ブリの脂でぎっとりした舌先を洗い流すようなさっぱりとした酒が主になる。
言わば、郷土の味覚と地酒は、仲の良い夫婦と同じ。
お互いを引き立て合って、その土地の味を育んでいる。
この関係、見習いたいものである。

生牡蠣が運ばれてきたところで、三重県伊賀市の若戎酒造「義左衛門」の純米吟醸生酒の登場を願う。
的矢牡蠣は評判とおり、仄かな甘味を感じ、雑味のない上品な味。
つるりと喉元を過ぎて、胃袋へと落ちていく。
牡蠣特有の苦味もない。
その後を追うように舌の上で舞い踊る「義左衛門」は、こちらも舌を刺すような辛口ではなく、フルーティな芳香が鼻を抜けていく、果実酒のような味。
ガード下の焼き鳥や煮込みで慣らされたオヤジの舌には、高貴な組み合わせである。
舌先にいつまでも留まるような主張はしない。
仄かな味覚や食感を堪能するところは、伊勢うどんと同様。
これが三重の味なのだろう。

さて貴兄は牡蠣フライは、何のソースをかけて召し上がるだろうか。
私はタルタルソースは、どうも苦手である。
晩飯のおかずならば口の中がマヨネーズで、とろりねちゃねちゃとなっても、別段腹も立たないのだが、酒の肴となると話も違ってくる。
タルタルソースの後では、繊細な味わいが持ち味の日本酒は、とろりねちゃねちゃに舌先が染まり、何も感じられなくなる。
ビールも同様。タルタルソースの火消し役としての役目しかない。
望むところは、ウスターソースを数滴垂らすか、醤油が一番である。
もちろん何もつけなくてもいい。

酒宴では、あくまで主演は酒であり、助演は新鮮な刺身や珍味といった肴。
タルタルソースは村人A程度の役柄。
その村人Aがわずか1行の台詞を朗々と語られては、たまったものではない。
タルタルソースには猛省を願いたい。


(つづく)

3月 7, 2018 店主のつぶやき |

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