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2018年3月 6日 (火)

第7話 一生に一度はお伊勢参りの旅





本日のスケジュールは、三重の美味しいものを食すだけとなった。
もっとも地場の食材に舌鼓を打つのがオヤジ会の主題と言っても過言でないから、いよいよ真打ち登場というところ。
日頃は馴染みの薄い三重の地酒が、どのような喉越しなのか、辛口なのか旨口なのか、歴史を辿れば御神酒をつくる古き蔵があるのか、いろいろと興味が尽きない。
思い浮かべただけで、もう口の中は甘酸っぱくなっている。


予め下調べしておいたのが、遊覧船乗り場の周辺に点在する浜焼き屋が数軒。
地元の魚介類を炭火で焼いて愉しむ、海水浴場にある海の家のようなお店。
ホテルでセレブを気取っているのだから、こういう庶民的なお店が、性に合っているし、いつまでも高貴に振舞っては肩が凝る。


新鮮な魚介を塩と醤油で味付けて、豪快に喰らおうという魂胆なのだが、先程から港の露地をあちらへこちらへと歩き回っていても、それらしい看板もなければ、賑わう酔客の声も聞こえない。
まるで漆喰の闇の中を、出口を探して手探りで歩いているようである。
店に電話してもコール音が鳴り響くのみ。
狐か狸か、果ては海坊主に騙されているような気分。





後になって知ることになるのだが、賢島は元々無人島で、近鉄が開発したリゾート地でゆえ、地元民として生活している人は、ほぼ皆無。
浜焼き屋も営業時間が終われば、自宅へとそそくさと帰ってしまうらしい。
と言うことは、今の状態は閉店後の遊園地で、レストランやカフェを探しあぐねているようなものである。


呑み食いするのならば、隣町の鵜方まで足を伸ばさないといけない。
この誰も住んでいないという治安の良さが、サミット会場に選ばれた理由のひとついうのだから、苦虫を噛み潰したような顔にならずにはいられない。


いろいろと教えてくれたのは、賢島駅前でぽつりと一台停まっていたタクシーの運転手。
途方に暮れている草臥れたオヤジ三人を不憫に思ったのか、私たちが狙い目をつけていた的矢牡蠣のお店以外に、地元民が足繁く通うお店を紹介してくれる。
運転手の話によると、賢島の由来は徒歩(かち)でも渡れる島が変化してその名になったと言われ、実際にタクシーで通過すると、本土と賢島を隔てる海の幅は10メートル程度。
実際に干潮時には歩いて渡れたらしい。


歴史が息づく伊勢路にあって賢島は、ようやく掴まり立ちができるようになった赤子のようなもの。
無人島に文化やコミュニティ、酒が呑めるような歓楽街が根付いているわけがない。
とにかく、呑みに行くのならば鵜方に賭けるしかないのである。

(つづく)
店主YUZOO

3月 6, 2018 店主のつぶやき |

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