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2018年3月13日 (火)

第11話 一生に一度はお伊勢参りの旅





今日は賢島駅から特急ではなく各駅停車に乗り、ローカル線の旅と洒落込む。
個人的には特急や新幹線で早々に目的地に到着する旅よりも、地元の人しか使わないホームがひとつしかない駅や無人駅に、ひとつひとつ停まっていく各駅停車が好きである。
早朝ならば、大きな荷物を背負った行商のおばちゃんで賑わい、夕暮れ時は学生たちでいっぱいになる。
各駅停車には地元の匂いが色濃くある。
だが近年になって、行商の姿は消えつつあり、ローカル線自体が存続の危機に瀕している。


賢島駅から伊勢市駅までは、一時間ほどの旅。
2両編成の電車がコトコトとレールの上を走っていく。
ほとんどが無人駅で、駅前に少しばかりの家が並んでいるだけで、雑木林と田園風景が広がっている。
地元でも遠出となれば、特急を使ってしまうのだろうか。
もしくは車中心の社会になってしまっているのだろうか。
乗客が疎らなままに伊勢市駅に着いた。


駅に着くと、駅前から出る路線バスに乗り換えて内宮に向かうことになる。
日曜日だけに内宮参拝に向かうバスや自動車で大渋滞が起こっていて、歩む程度にしか前に進まない。
ふと横に並んだバスのナンバープレートを見ると、福島県から参拝となっている。
お伊勢参りの人気は、二千年近く経った現在でも衰えを知らない。
えらいことである。




バスから降りても行列は、正宮の皇大神宮まで続いているようで、これだけ多くの人々が同じ方向に向かって歩く様は、少し異様な光景である。
小雨が降り出したので、オヤジ三人は脇目も振らずに進んでいくのだが、参道沿いに御座している巨木に、ついつい足が止まり、見入ってしまう。
巨木の種類は杉や欅が主で、樹齢はゆうに千年を超えている。
もしかすると何本かは伊勢神宮が建立される以前から、その地に根を張って、人々が行き交う様を見届けていたのかもしれない。


大きな幹は天に向かって悠然と伸び、風が吹けば神々の宴が木の頂きで催されているかのように、枝や葉がざわざわと歌い出す。
パワースポットなんて軽率な言葉では表せない、圧倒的な存在感である。
もし時間が許すのならば、この行列から離れて、伊勢神宮の各所に御座する巨木巡りをしたかったと思うほどである。
おかげで皇大神宮での願掛けは手を合わせただけで何も願わず、以降も巨木を見つけては独り微笑んでいた。


念願の伊勢神宮を参拝したのに、霊験あらたかな皇大神宮の印象は薄く、幹の周囲が10メートルはありそうな太い幹が参拝者に撫でられて、艶々と黒光りしていて神々しい輝きを放っていたことしか覚えていない。
一生に一度と鼻息荒く参拝したのに、我ながら情けない。


(つづく)
店主YUZOO

3月 13, 2018 |

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