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2018年2月13日 (火)

オリンピックが始まる、オヤジの小言が多くなる







平昌オリンピックが始まった。
世界が集うスポーツの祭典という表の顔が半分、期間限定のエンターテイメント・テーマパークという裏の顔が半分という気がしてならない。
巨額な資金が注ぎ込まれるため、建築物やデザインの受注を取るに、政官界が影で動き、黒幕が暗躍し、権力者が微笑むという公式を軸に、密約、策略、裏工作、接待、談合などが図られ、この晴れの舞台が出来上がっているのだろう。


右手で握手して、左手で札束を数えている図式。
平昌オリンピックを批判しているのではない。
東京オリンピックのエンブレムや会場設営のゴタゴタを見て、そう感じるようになっただけである。

擦れ枯らしのオヤジは、何事にも純粋に煌めく眼差しを注ぐことができず、常に斜から批判的に見てしまう癖が、習慣づいてしまっている。
札幌オリンピックで感動した純心は、とうに失ってしまっているのだ。
もしくは心の奥底に、何重にも鍵がかかった小部屋に、ひっそりと仕舞われていて、なかなか人目に触れることはなくなった。
年を重ねて様々なことを経験するとは、何かを失うことでもある。哀呼。


炬燵でゴロ寝してテレビを眺めていたら、冬季オリンピックでは過去最高の92の国と地域が参加とアナウンスされ、つい身を乗り出して画面を見入った。
クロアチア、スロベニア、セルビア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルセゴビア、マケドニアは元はユーゴスラビア連邦だった国々。
ジョージア、モルドバ、アゼルバイジャン、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、バルト三国などの国々も元ソビエト連邦。
自国の旗を振りながら嬉々として入場する姿に、目頭が熱くなったり、細い目を瞠ったりと、忙しい。


1991年にソビエト連邦崩壊後、それぞれの地域が独立した結果であって、過去最高の出場数と言われても、その歴史的背景を考えると素直に喜べない。
ユーゴスラビア連邦はNATO軍の大規模な空爆が分裂に一役買ったわけだし、ソビエト連邦崩壊後に堰を切ったようように各国が独立に動いたのは、モスクワを中枢とした政治体制が原因であるのは周知のとおり。
さらにジョージアは、ロシア語読みだったグルジアという名前を英語読みに変更してまで、ロシア的なるものから離れようとしている。




イスラエルは豊富な資金で選手団を送り出すことができるけど、パレスチナの人々にとっては、オリンピックは遠い星で開催される祭典なんだろうぐらいしか思っていないのだろう。
また開会式入場のハイライトだった北朝鮮と韓国合同の選手団は、国民の切なる願いというよりも、政治的な思惑が働いたとしか見えない。
オリンピックは、世界が平和にひとつになるという精神に基づいているというが、そんな絵空事で括れないと、暗澹たる気分になってしまう。
国家とはなんぞや。平和とはなんぞや。


擦れ枯らしのオヤジは画面に向かって小言を繰り返す。
聖火台が点火されると、快呼と拍手を送る。
トンガの選手の肉体美にも、快呼と拍手を送る。
マイナス2度の極寒の世界で、あの筋骨隆々とした肉体を観客に見せつけるのは、ある意味、確信犯的な犯罪である。


呆れた家族は夕飯が終わると、そそくさと自分の部屋へと退散。
居間に残されたのは、擦れ枯らしのオヤジが独り。咳しても一人。
今日は休肝日と決めていたから、酒を呑みながら愚痴をこぼさないだけマシだと、独りごちになりながら番茶を啜る。


何だかんだ小言を嘯きながらも、一番オリンピックを愉しんでいるのだ。
しかし世界が平和にひとつになる以前に、家族がそのうち独立宣言をしそうな気配である。哀呼。

(店主YUZOO)

2月 13, 2018 店主のつぶやき |

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