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2018年2月14日 (水)

第36回 耳に良く効く処方箋




ハウリン・ウルフ、マディ・ウォーターズ、ボ・ディドリー『スーパー・スーパー・ブルース・バンド』(チェス)

レコード会社というのは、経営難になると突飛もない企画をして、再生を図るものである。
50年代、飛ぶ鳥を落とす勢いだったチェス・レコードも、このアルバムが録音された1967年頃には、ヒット曲も無く、かと言って期待の新星も見当たらず、完全に経営が行き詰まりの状態。
社主レーナード・チェスも、ここは奮起と斬新な企画を熟考に熟考を重ねる。
もしかしてブルース界の帝王が一堂に会してにレコーディングに臨んだら、想像を超えた化学反応が起こるのではというアイデアを元に製作されたのが、このアルバムである。


このアイデアを例えるならば、北島三郎と勝新太郎のショーに、トニー谷が乱入したようなもの。
ただでさえ我の強いブルースマンなのに、シカゴ・ブルースの大御所に鎮座するハウリンとマディの二人に、変わり者のボが割り込んでくる図式。
最初から新時代のブルースを創り上げようという意気込みはない。
存在するのは俺様がブルース界の一番だ、顔役だという自我の対立のみ。
譲り合いの精神など初めからない。


しかし予定調和に小さくまとまったアルバムよりも、この自我のぶつかり合いが、意外に病みつきになるもので、この三人の心境を想像しながら聴くのが面白い。
トニー谷的立場のボは、完全におちゃらけていて、クッキー・ヴィという女性コーラスと一緒に奇声をあげたり、トレモロを効かせた銭湯のようなチャプチャプ音のギターを弾いたり、やりたい放題。




頑固オヤジのハウリンは、当然そんなトニー谷的ボを快く思うわけもなく、ボの持ち歌になると、明らかに馬鹿にした態度で、浪花節的な唸り声をあげて、曲をぶち壊そうとする。
その様子を見ながら苛立ったのか、完全に主役を取られると焦ったのか、マディは他人が気持ち良く歌っている途中でも、強引にリードを取ろうとする。


とっくに不惑の年など超えた大御所が、臆面もなく自我とブルース魂を放出していることに、美しささえ感じてしまうのだ。
今の言葉で言うならば、空気の読めないオヤジ連中と揶揄されるかもしれない。
若い奴の自我の強さは青臭いが、一本筋の通ったオヤジのそれは、生き様という以外に何と言おうか。


このブレない人生を突き進む美しさ。
小さく人生をまとめてしまっては、何も語ることができなくなるぜと諭されているようである。

(店主YUZOO)

2月 14, 2018 店主のつぶやき, CDレビュー |

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