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2018年2月 6日 (火)

第33回 耳に良く効く処方箋




ポール・バターフィールド・ベターデイズ『ライヴ・アット・ウィンダーランド・ボールルーム』(ベアーズヴィル)

この未発表ライヴが発売されると音楽雑誌に載った時の興奮は、今でも昨日のことのように覚えている。
ポール・バターフィールドのブルースハープの音色に、高校生の時にガツンと衝撃を受けて以来、その音を聴きたいが為に、いろいろとアルバムを漁ってきたが、その理想形としてベターデイズのファースト・アルバムがある。
そのベターデイズの未発表ライヴが出るのである。


好きな女の子から告白されたぐらいの興奮。
発売日が来るのを指折り数えるだけでは飽き足らず、もしかしてフライングで発売日前に売っている店はないかと、レコード屋を巡ったりした。
もちろん店頭に並んでいるわけがない。
早く聴きたいけど、その音源は手に入らないもどかしさ。
もしかすると著作権の関係で、発売中止になる憂き目に合うかもしれないのである。
こんな初々しい気持ちが、身体を包み込むのも久しぶりのことであった。


ようやく販売当日。
手に入れると、何処にも寄らずに一目散にステレオの前へ。
このベターデイズはエイモス・ギャレット、ロニー・バロン、ジェフ・マルダー、クリス・パーカー、ビリー・リッチと腕利きミュージシャンが集合しただけでなく、ソロで活躍できる程、自身のスタイルを完成した強者ばかり。
2枚のアルバムを発表しただけで解散したゆえに、残された音源は限られている。
ライヴとなるとどんな融合が起こるのか、想像すらつかないのだ。
しかもファースト・アルバムを発表して1ヶ月後の凱旋ライヴである。




オープニングの「Countryside 」で、いきなりポールの壮絶なブルースハープ・ソロで幕が開ける。
まるで蒸気機関車の汽笛。
こんな凄まじいブルースハープを聴いたことない。
新しい組んだバンドへの並々ならぬ心意気と入れ込みようが、その熱い息遣いからわかる。


そしてジャニス・ジョプリンの歌のない遺作「生きながらブルースに葬られ」とボビー・チャールズの傑作「Small town talk 」と続く。
リズムはタイトで、決してアンサンブルを崩すことなく手堅くグルーヴ感を紡ぎ出す。
その安定したリズムに載せて、エイモスのギターがツボを心得たソロやオブリガードを聴かせて、ロニーがニューオリンズ仕込みの転がるピアノを奏でる。
まさに至福のとき。


そしてファースト盤でも白眉のギターソロを聴かせてくれたパーシー・メイフィールドの名曲「Please send me someone to love 」に酔され、その興奮も醒めぬままに、再びポールが壮絶なブルースハープを聴かせる「He’s got all the whiskey 」へと雪崩れ込む。
この時点で蒸気機関は3両連結で、雪に埋もれた網走平野を爆走しているような、石炭が赤く煌々と燃え盛るような熱さ。
ポール・バターフィールドの凄まじいブルース魂が、溶岩となって吹き出している。


聴き終わって、じっとりと背中に汗をかくのは、このアルバムぐらいである。
全盛期のポールを止めることは誰もできない。
ぐっと冷え込んだ朝に、私はストーブ代わりにこのアルバムを聴く。
身体の芯から温まる。

(店主YUZOO)

2月 6, 2018 店主のつぶやき, CDレビュー |

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