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2018年2月 1日 (木)

第30回 耳に良く効く処方箋




ザ・バンド『ザ・バンド』(キャピトル)

このジャケットの5人の顔立ち、堪らなく良い。
アメリカ開拓時代に生きているような厳しい眼つき、ゴールドラッシュで幸運を掴み損ねた敗北者のようで、写真から人生の機微が滲み出ている。
当時人気が上がり始めたグループとは思えない、実に重苦しいスナップ写真。


エリオット・ランディというカメラマンが撮影した一葉なのだけど、しかし、これ程までにザ・バンドの音楽を適切に表現したものもない。
ザ・バンドの音楽は、ルーツミュージックを礎にして、どこか懐かしい音楽を創り上げたが、そこには社会の底辺で生活している人々の息づかいがするのが魅力で、ビアホールで酔漢が歌い出すと、それにつられて周りも歌い始めるような親しみ易さと、底知れぬ哀愁がある。
それがこのジャケット写真に端的に表現されている。


高校生の時にこのアルバムを買ったらポスターが付いていて、部屋の天井に貼って、寝る前に眺めていたのを思い出す。
こんな汗臭い男たちに思いを寄せる高校生というのも、今考えると偏屈な若者だったと、改めて深く反省した次第。




このアルバムはデビュー盤と甲乙つけがたい、どちらも名盤なのは変わりないのだが、何故かこちらの方がプレイヤーに載ることが多い。
曲の順番がデビュー盤よりも決まっていて、LPでいうA面の流れは、ライヴを耳にしているような感覚。
ジャグ、カントリー、ニューオリンズなどの古き良きアメリカ音楽をモチーフにした曲が続き、音楽でアメリカ旅行をした最後に流れる「Whispering pines 」の美しいバラードで、このA面の旅を終える、心憎い演出である。
その余韻に浸ったあとにB面に返すわけである。


今回聴いて、昔はレヴォン・ヘルムのむせ返るような男臭いソウルフルな歌声が好きだったけど、今の心情は、リチャード・マニュエルの繊細な男心を歌う姿に惹かれたのが収穫。
私も年を重ねたということだろうか。


改めてジャケット写真を見つめる。
この写真が撮られた時のザ・バンドのメンバーは、まだ20代である。
どれだけ老成していたのだろうね。

(店主YUZOO)

2月 1, 2018 店主のつぶやき, CDレビュー |

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