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2018年2月27日 (火)

第2話 一生に一度はお伊勢参りの旅





まず外宮に向かう前に手荷物を預かり所に手渡す。
神社や寺院は砂利が敷き詰められていることが多く、スーツケースをひいていると殊の外難儀することは、長年の旅で経験済み。
楽こそは人生の桃源郷的境地。
いつでも楽が買えるのならば、お金が続く限り、そうしたい。


さて荷物を預けてしまうと、無性に腹が減っていることに気がつく。
想像していた以上に、海から吹き寄せる伊勢路の風は冷たく、腰や膝に痛みを抱えているオヤジには、サウナ後の水風呂のような身が縮む辛さが襲う。
普段は無口な内海さんが「早く店を探して暖まろう」と半ば訴えるように言い出し、菊池さんに至っては「日本酒で暖まりたいな」と呪文のように呟く始末。
神様にお参りする前に酒を呑むとは、何と罰当たり、不届き千万な発言なんだと、菊池さんを咎めつつ、ご当地ソウルフードの伊勢うどんを食べることで、意見が一致する。
松坂牛のステーキでは初日から散財し過ぎだし、身分相応の食事ということでは、正しい判断したわけである。




見つけたのは、参道から離れた鄙びたお店。
年老いた夫婦が二人が切り盛りし、旦那が厨房を担当、奥様がう注文を伺う、昭和の香りが漂う小さな食堂である。
表看板には、営業時間は11時から17時までと、頑固な店主がこだわりの逸品しか出さない名店のようだが、店の佇まいからして、遅くまで店の灯りをつけていたところで、客足が増える感じではない。
もしくは長い間、一生懸命に店を続けてきたし、余生は無理せずに仕事したいという気持ちの表れなのだろう。


しかしこういうお店が、三人のなかでは、着飾らない、儲け主義に走らない、地元で愛されている店という目安になり、ガイドブックには載らない影の名店との判断になる。
今までに何百回という出張で鍛えてきたベテラン・スカウトの眼である。
引き当て率は7割を誇る。
店の暖簾をくぐると昭和食堂らしいレトロな椅子とテーブル。
煤けた壁には芸能人の色紙などなく、セピア色になった観光ポスターと伊勢まつりのスナップ写真が数葉。
懐かしい百円入れて占う卓上占星術機まで、申し訳なさそうにテーブルに置いてある。
飾り気なく、ひっそりとしているのがいい。

(つづく)

2月 27, 2018 店主のつぶやき |

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