« 第19回 紙の上をめぐる旅 | トップページ | 第20回 紙の上をめぐる旅 »

2018年1月 4日 (木)

第10回 耳に良く効く処方箋




ジェームス・ブラウン『セイ・イット・ライヴ&ラウド』(ポリドール)

JBの発掘ライヴ音源で重要な位置を占めるのが、このアルバムとブッチー&キャットフィッシュのコリンズ兄弟が参加したパリ公演盤になるが、歴史的な重要性という観点から見れば、こちらの作品に軍配が上がるだろう。
JBのドキュメンタリー映画『ピュア・ダイナマイト』を観た時も、このダラス公演は、映画のハイライトになっていた。


このアルバムの副題にある08.26.68は、この公演が開催された日付。
公民権運動が最高潮のうねりとなってアメリカ全土を席捲していた。
その中で中心をなしていた指導者キング牧師、マルコムXが相次いで暗殺され、まさにアメリカは二分されて、いつ各地で暴動を起こるかわからない緊張に満ちていた。
とくにダラスは対立が先鋭化して、危ないと言われていた、まさにその時。
その緊張を強いられていたダラスで、黒人たちの怒りを納めようとライヴを企画するのである。


映画では、そのステージに立ったメンバーが、この歴史的なライヴを回想する場面があるのだが、いつ暴漢が乱入してきても、凶弾で狙われても、おかしくない状況だったと口々に言う。
その一触触発の出口なしの状況のなか、JBはステージに立ち、このコンサートに来てくれた人々に礼を言い「I’m black and l’m proud 」を高らかに宣言し、歌い出すのである。


俺は黒人で、俺には誇りがある。


この時代に、これほどシンプルで美しいメッセージがあるだろうか。
先日紹介した『ブルースだってただの唄』の中でも、インタビューされた黒人女性は、このメッセージにどれほど勇気づけられたかと、熱く語っていた項がある。


このアルバムは、このダラス公演の全てを収録している。
JBのボーカルは、言うに及ばず神が降臨しているが、バックの演奏力の高さもハンパではない。
クライド・スタブルフィールドのファンキー・ドラムとチャールズ・シュレールの野太いベースのコンビネーションに、リズムと一体となって、会場全体を激しく揺らしている。
このライヴの山場「Cold sweat 」、「There was a time 」でみせるファンク魂は悶絶もの。
黒人である誇りを高らかに、音楽にして宣言しているようだ。


とにかく神が宿っているアルバム。
体験すべし。

(店主YUZOO)

1月 4, 2018 店主のつぶやきCDレビュー |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 第10回 耳に良く効く処方箋:

コメント

コメントを書く