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2018年1月30日 (火)

第28回 耳に良く効く処方箋




オーティス・ラッシュ『オール・ユア・ラヴ〜激情ライヴ1976』(デルマーク)

このライヴ盤を聴かずして、オーティス・ラッシュを語ること無かれ。
とにかく表題どおりの嘘偽り無しの激情ライヴである。


ブルースのガイド本で語られるオーティス・ラッシュは、デビュー当時のコブラ録音が凄まじいブルースを放っていたため、以後のアルバムは評価が厳しく、今ひとつだの、眠れる巨人はいつ目覚めるのかと、手放しで受け入れられることがなかった。
最初に後世に残る傑作群を発表してしまうと、次作以降は手厳しくなってしまうのは、世の常かもしれないが、長年にわたって言われ続けると、さすがの巨人だって不貞寝したくもなる。


私観だが、オーティス・ラッシュはスタジオでこじんまりと録音するよりも、鉄壁のバンキングに煽られているうちに、自身のブルース魂に火がつき、抑えていた激情をボーカルに、ギターに解き放つのではないか。
何テイクも録音して、トラックを重ねていくスタジオは合わない。
ライヴに本領を発揮するブルースマンなのである。


日比谷野音で行われたブルース・フェスティバルでも、オーティス・ラッシュは周りのビル郡のガラスが震えて落ちるぐらいのギターを聴かせてくれたし、艶のある男気に満ちたボーカルは、巨人の名に相応しい素晴らしいものだった。
このアルバムは、その時のライヴを彷彿させ、ブルースメーターの針を振り切った最高潮の音を聴かせてくれる。




とくにスローブルースで聴かせるボーカルとギターは極上で、オーティス・ラッシュの実力をまざまざと見せつける。
「You’re breaking my heart 」、「Mean old world 」、「Gamblers blues 」など感情を抑えたボーカルの後に、斬り込むように入るギターソロは鳥肌もの。
完全に自己の世界に観客を引き摺りこみ、陶酔させている。
この世界を目の当たりにするなんて、この時の観客が羨ましい。


この音源は、30年経った2005年に陽の目を見ているのだが、すぐに発表していれば、眠れる巨人と揶揄されずに済んだのに。
オーティス・ラッシュの1枚を選べと言われたら、迷わずこれを選ぶ。
そう思うと口惜しい。
デルマーク・レコードの罪である。

(店主TUZOO)

1月 30, 2018 店主のつぶやきCDレビュー |

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