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2018年1月27日 (土)

第26回 耳に良く効く処方箋




ヴァン・ダイ・パークス『ムーンライティング』(ワーナー・ブラザーズ)

ヴァン・ダイ・パークスが1998年に発表したアッシュ・グローヴでのライブ盤。
音源自体は、1996年に録音されたというから、2年の歳月を経て発表というあたり、実に奇才音楽家らしい。
きっとミックス・ダウンしながら、左右の音のバランスが悪いだの、奥行きを感じられないだの、ぶつぶつと小言を並べて、遅々として作業が進まなかったのだろう。


満を持して発表された音だけに、悪い訳がない。さすが職人が成せる技といいたい。
昨今、納期に間に合わずため、原価を下げるため、データを改竄して安直にモノづくりを行う輩がいるけれど、ヴァン・ダイ・パークスの爪の垢を煎じた上に、更に発酵させて、熱いお茶と共に飲んでもらいたい。
良いモノをつくるには、手間隙と妥協をしない心持ちが大切なのである。




さてこのアルバムは、ベスト・オブ・ヴァン・ダイ・パークスという体裁を取っていて、新旧の名曲を織り交ぜており、老若男女が愉しめる内容になっている。
もっとも寡作の音楽家だから、この時点で活動歴30年のベテランでありながら、発表されたアルバムは10枚にも満たない。
しかし曲つくりの姿勢が一貫しているので、違和感なく聴くことができる。
まさに頑固職人の風情。
世間に流されず、目を向けずの精神である。


フル・オーケストラが優雅に奏でる名曲の数々は、旧き良き映画音楽のサントラを聴いているようであり、アメリカが輝いていた時代を思い浮かべる。
そのこだわりは、SP盤を模したジャケット・デザインにも現れている。
20世紀は終わりに近づいているけども、戦争に明け暮れていただけではない、素敵な音楽もたくさん生まれたんだよと言わんばかりに。


そしてクレジットを眺めて驚いたのだが、コンサート・マスターは、ダン・ヒックス&ザ・ホットリックスでバイオリンを弾いていた、シド・ページなのである。
旧き良きアメリカ音楽を知り尽くしている2人が、タグを組んでいるのだ。悪い訳がない。


(店主ЮУЗОО)

1月 27, 2018 店主のつぶやきCDレビュー |

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