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2018年1月21日 (日)

第22回 耳に良く効く処方箋




デラニー&ボニー『モーテル・ショット』(アトコ)

窓から注ぐ冬の陽だまりのなか、猫を膝に乗せて、ぼんやりと空を見上げいる。
夏の強い陽射しとは違って柔らかく、身体に染み込んで来る穏やかさである。
空気が乾いているからだろうか。
雲ひとつない。どこまでも青く澄んでいる。
中秋の物悲しき夕暮れ時も好きだが、この冬の静けさも、また心安らぐ季節もない。


1971年に発表されたこのアルバムは、この季節に最適な作品である。
元祖アンプラグド・アルバムと称されているだけに、ギターやベースなどすべてアンプを通さないサウンドで仕上げられている。
しかしスタジオ録音でなく、アルバム・タイトル通り、宿泊先のモーテルで、気心の知れた音楽仲間同士が集まったセッションである。
たぶんマイクの配置も、それほど気を配ってはいないだろう。
一聴すると、海賊盤に匹敵するような音質だが、それがこのセッションがリラックスのもとに生まれたものだと解する。




参加ミュージシャンは、当時の名うて腕利きばかり。
グラム・パーソンズ、デイヴ・メイスン、デュエン・オールマン、レオン・ラッセル、カール・レドル、ボビー・ウィットロックなどの豪華な面々。
彼らが親しんだフォーク、ブルース、ソウル、ゴスペルの名曲群を肩肘張らずに「この曲でも演ってみるかい?」という気楽な気分で演奏し始める。


このセッションで演奏面での核は、ピアノのレオン・ラッセルであることは間違いないが、ゴスペル・タッチの指さばきが、堪らなく良い。
1曲目「Where the soul never dies 」、「Will the circle be unbroken 」、「Going down the road feeling bad 」などで、そのピアノの腕前を堪能できる。
当然のことながら、主役のデラニー&ボニーのご両人も、リラックスしているせいか、スタジオより愉んでいる様子。


決して名盤として讃えられるものではないが、冬の陽だまりのように、ホッとひと息できるアルバムである。
こういう気楽なセッションを演ってみたいなと、楽器を手にする者ならば、思わずにいられないアルバムでもある。

(店主YUZOO)

1月 21, 2018 店主のつぶやきCDレビュー |

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