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2018年1月20日 (土)

第21回 耳に良く効く処方箋




キング・カーティス『オールド・ゴールド』(Tru-Sound )

キング・カーティスの推薦盤として『アット・フィルモア・イースト』と共に挙げられるのが、このアルバム。
1961年に新興レーベル、トゥルー・サウンドより発表。
嬉しいことに日本では、オールディズ・レコードが紙ジャケットで再発している。
オールディズ・レコード、相変わらず良い仕事をしています。
再発レーベルの鑑。


『アット・フィルモア・イースト』がファンキー・ソウルの名盤だとしたら、こちらはソウル・ジャズの名盤と言えようか。
若き日のエリック・ゲイルのギター、ポスト・ジミー・スミスのオルガン奏者ジャック・マクダフ参加と、ひと癖ある実力者が名を連ねているのも注目。
ここでのキング・カーティスは、ジェイ・マクリーニーやジミー・フォレストからの系統、ジャンプ・ブルース流儀のサックスを聴かせてくれる。


こういうサックス・プレイは、正統派ジャズ愛好家は、眉を八の字に、眉間に縦皺を走らせてしまう下卑た音。
知性を感じられないと嫌悪するマッチョな音なのだが、私はこちらの方が豚タンと同じくらいの大好物。
高級焼肉店よりも下町のホルモン焼きが、私の耳には合っている。




特にそのマッチョぶりが最高潮に達するのは、ジャズ・スタンダードの「Harlem nocturne 」。
玉のような脂汗で汗臭いの、肩の辺りが筋骨隆々だの、男汁が飛び散るの、サックスが熱い吐息で悲鳴をあげているだの、我こそが夜の帝王キング・カーティスだといわんばかりの黒光りするブローで主張しているのだ。


今宵はお前を寝かさないぜというより、今宵はお前をバターにしてやるという男気のある音色。
そういえばバターがとろける名作「チビ黒サンボ」は、差別を助長する絵本に指定されて、今は絶版になっているそうだ。
トラがバターになって、ホットケーキにかけられるという自由奔放な発想は、突拍子なくて好きなんだけどなあ。


このアルバム。
ミッドナイトに独り聴いてはいけない。
キング・カーティスのマッチョぶりが強烈なあまり、ベッドの横に誰もいない自分の境遇が、惨めに思えて仕方なくなってくる。


そんな私に、ジャケットのキング・カーティスが、今宵は熱い夜を過ごせよと、ウィンクしているのが心憎い。
まったく。

(店主YUZOO)

1月 20, 2018 店主のつぶやきCDレビュー |

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