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2018年1月 3日 (水)

第19回 紙の上をめぐる旅




立川志の輔『志の輔旅まくら』(新潮文庫)

当然ながら落語家だって旅をする。
もちろん酪農家だって旅をする。
生まれながらにして人には、ここより他の場所に行きたい気持ち、異邦への憧れ、まだ見ぬ桃源郷を希求する遺伝子が色濃くある。


この本、立川志の輔の旅をテーマにしたまくらをまとめたもので、同じく柳家小三治『ま・く・ら』という名著があるが、それと双璧をなすぐらいの快書である。

ただこういう肩肘を張らずに読める本の解説を目にするほど、つまらないものはない。
外国の小噺を通訳を介して聞くようなもので、鮮度が落ちるのは当然のこと、さらに妙に教訓めいたお堅い話に変わってしまう。


小噺は諺ではない。
というわけで、思いついたことを、つれづれなるままに書くことにしよう。

立川志の輔が巡った旅のなかで、羨ましく思うのは映画『ブエナビスタ・ソシアル・クラブ』を観て、キューバ行きを思い立ったこと。
太い葉巻を加えてビシッとしたスーツを着た、90才のミュージシャン、コンパイ・セグンドの「俺の人生そのものが、恋だった」と粋な台詞にガツンとやられて、こんなに人生と音楽を満喫している老人が住むキューバとは、いったいどのような国と好奇心が芽生えたのが発端。


このフットワークの軽さと行動力。
私の行きたい国No. 1が長年キューバなので、羨ましいと言ったらこの上ない。





この誰も行こうとは思わない国こそ、何か面白いことが隠されていると考えるのが、この稀代の落語家の勘どころで、インド、北朝鮮、メキシコ、羽咋市、高知市へと足を延ばしていく。


石川県羽咋市はUFO の町で宇宙博物館があるそうで、そこに飾られている宇宙船ルナ24号がロシアから届くまでの顛末記。
門外不出と思える宇宙船を、どうやってロシアから運んできたのかという件は、NHK『プロフェッショナル』よりも面白い。
羽咋市には失礼だが、国内でも魅力的秘境は、まだあると再認識した次第。


この本の正しい読み方。
まず『ブエナビスタ・ソシアル・クラブ』をツタヤで借りてくる。観終わったのちに、この本を読む。
次に羽咋市の場所をグーグルで探し、自分の家からどれだけ時間がかかるのか調べてみる。そして空を見上げて、UFO かミサイルが飛行していないか確認する。
安心したところで、羽咋市と北朝鮮の旅を読む。これが正しい。

(店主YUZOO)

1月 3, 2018 店主のつぶやきブックレビュー |

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