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2018年1月17日 (水)

第19回 耳に良く効く処方箋




ザ・バーズ『バードマニア』(コロンビア)

ロックとフォークの融合、カントリー・ロックの創始者とロック界に、燦然たる業績を残したバーズ。
実は私が最初に買ったのがこのアルバムである。
普通ならば、デビュー盤『ミスター・タンブリング・マン』か、ロック史では避けては通れない『ロデオの恋人』を、最初に聴くのが定石なのだろうが、何をどう間違ったのか。
悩み多き高校時代は、ときおり理解不能の行動に出ることがある。実に甘酸っぱい。


このアルバムは音楽評論家の間では、当時酷評されていて、たぶん現在でも駄作という烙印が押されている、不憫な評価になったままで、前に進んでもいなければ、後退りもしていない。
その哀しき迷盤が先日、リサイクルショップで500円均一で売られていたのを見て、ついつい懐かしく思い、高校時代の私が何にのぼせ上がって、泣け無しの小遣いで買ったのだろうと確認する意味で買ってみた。


一曲目「Glory,glory 」は、古いゴスペル・ソングをアレンジしたもの。
ポップな感じのアレンジになって聴き易くなっているが、実際の1940から50年代のゴスペル・クァルテット全盛期を経験してしまった今の耳には、凡庸に聴こえる。


R.Hハリスが率いたソウル・スタラーズの同曲なんぞは、良く響くリードボーカルの美声、ハーモニーの素晴らしさと、悶絶もののコーラスワークを聴かせてくれる。
ゴスペルを知らなかった高校生の私は、このアルバムで一番好きな曲だったのに、年を重ねるということは、昔輝いていたものを鈍色に変えてしまう。
やれやれ。





2曲目「Pale blue 」、3曲目「I trust 」とロジャー・マッギンの曲が続くが、そんなに悪い出来ではない。
当時の酷評ではアレンジ過多というのがあったが、バーズの系譜でみるのならば、その後のイーグルスやポコなどもストリングスを入れたり、仰々しいギターソロが挿入されたりと、ドラマチックな展開が定番になっていくのだから、その先駆けと思えば、自然に耳に入ってくる。
1971年の発売当時では、フォーク・カントリー系ロックでは、斬新過ぎたアレンジだったということか。


4曲目「Tunnel of love 」、5曲目「Citizen Kane 」と今度はベースのスキップ・バッティンの曲に変わる。
これがまったくバーズには無かった曲調で、しかも平凡極まりない駄曲なのである。
50年代R&B調に仕上げているのだが、歌は下手だし、使い古されたコード進行だし、バーズが演奏することに何の必然性も感じられない。


このつまらない曲を聴くならば、古いアトランティック盤の方が、どんなに耳に優しいか。
酷評の元凶を垣間見た思いである。


CDには3曲のボーナス・トラックが入っていて、ロジャー・マッギンが敬愛するボブ・ディランの「Just like a woman 」のカバーが聴けます。
これはなかなかの出来です。


(店主YUZOO)

1月 17, 2018 店主のつぶやきCDレビュー |

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