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2018年1月 7日 (日)

第12回 耳に良く効く処方箋




ビリー・ポール『360ディグリーズ』(フィィラデルフィア・インターナショナル )

久しぶりの三連休だというのに、何もヤル気がおきず、音楽を聴くか、本を読むか、うつらうつらと転寝するかで、一歩として外に出ていない。
ヤル気スイッチなど初めから付いていないようである。


外が寒いからという理由ではない。
今流行りのオヤジの更年期というやつが、心身を侵しているのか。
前世がハシビロコウで一日中、川の流れを見ていても飽きない性格。それが年を重ねて露わになったということなのか。
どちらにせよ、万歩計を見ると1日200歩程度しか動いていない。
転寝好きのハシビロコウである。やれやれ。


このアルバムはビリー・ポールの特大ヒット「Me and Mrs Jones 」が入ったもので、フィィラデルフィア・インターナショナルを代表する1枚となっている。
ギャンブル=ハフのプロデュース体制で、最初に放ったNo.1ヒットでもある。
この特大ヒットは、言わば不倫ソングで有名な曲で、艶かしい昼ドラマのような歌詞が、当時、御婦人や殿方の心を捉えたのだろう。


僕とミセス・ジョーンズ
二人は秘密を持っている
よくないこととは知りながら
忘れるにはあまりに強いこの思い
これ以上気持ちが高まらないように
ぼくらは必死に努めてきた




そしてジャケットに写るビリー・ポールは、色事師の典型といった顔つきだけに、さらに妄想が膨らんで、歌詞にリアリティが加わったにちがいない。


会うのはよくないと口では言っておきながら、カフェでお互いの手を絡め合わせて、次に会う計画をたてているのである。
必死に努めるというのは、謙虚に受け止めると同義語で、もっと周到な計画をたてていること。
これも色事師の常套句ではないか。



ただ実際のビリー・ポールは、色事師でも不倫萌え男でもなく、公民権運動に携わり、二度逮捕されたという経歴を持つ、社会の不正と戦う活動家でもあった。
このアルバムにも自身が作曲した「I’m a prisoner 」、「I’m gonna make it this time 」というメッセージ色の濃い曲を歌っている。



それを思うと、ビリー・ポールは気の毒である。
特大ヒットを放ってしまったおかげで、そのイメージが先行して、勝手に色事師シンガーと型にはめられてしまい、本来の自身が抱いている思いや感情は、聴く側は伝わることなく、ヒット曲だけが勝手に先へと進んでいく。


その後、これ以上のヒット曲に恵まれなかったのだから、尚更であろう。
たぶん今でも場末のキャバレーで、年増の御婦人から、あの曲を歌ってとせがまれて、脂ぎったバリトンボイスで、その御婦人の耳元で囁くように歌っているにちがいない。
可哀想なビリー・ポール。


ハシビロコウの私が憂いているのだから間違いない。

(店主YUZOO)

1月 7, 2018 店主のつぶやきCDレビュー |

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