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2017年12月27日 (水)

第7回 耳に良く効く処方箋




マルコス・ヴァーリ『シンガー・ソングライター』(オデオン)

マルコス・ヴァーリのブラジル本国での2枚目。
マルコスのボサノヴァ時代を代表する1枚で、メロディメーカーとして類い稀な才能を発揮した名盤である。
アメリカで大ヒットしたアルバム『サンバ68』は、ここに収められている曲を再アレンジしたものが多く、原点を知るならば、この1枚ということになる。


お洒落なカフェの必聴曲「summer samba 」、「バトゥーカーダの響き」、「If you went away 」など、絶対に一度は耳にした曲が勢ぞろい。
私のなかでは、ブラジルを代表する偉大なる作曲家といえば、アントニオ・カルロス・ジョビン、ジョアン・ジルベルト、マルコス・ヴァーリとなるが、その事についても異論はないだろう。


才能がある人が実力を発揮したときほど、美しく歓びに満ちている作品が創造される。
私のような凡庸な人物には、それは手の届くことのない羨望の的であり、それを耳にすることができる悦びであり、音楽の魔力というものを、否応にも思い知らされる。


音楽は音として流れている時にしか、その美しさを感じることができない。
終われば静が訪れる。
言わば線香花火のような、一瞬の儚さがある。
マルコスは、その音楽の宿命を熟知しているのか、流麗で物悲しいメロディを紡ぎ出しては、わずか3分程度に納めて、余韻だけを残していく。


ジャケットのアートワークといい、その後のアメリカでの活躍を思うと、地味な印象を受けてしまうが、決して内容が悪い訳ではない。
むしろ、若き日のマルコス・ヴァーリの溢れんばかりの才能が、大輪の花の如く開花したアルバムだといえる。


いつ聴いても、心の処方箋となる珠玉の逸品。

(店主YUZOO)

12月 27, 2017 店主のつぶやきCDレビュー |

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