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2017年11月 8日 (水)

第6回 紙の上をめぐる旅




小沢昭一・宮越太郎『小沢昭一的東海道ちんたら旅』(新潮社)

TBSラジオの人気番組「小沢昭一的こころ」は、われわれ中年のどんよりと光る滓星にとっては、小沢昭一の軽妙な語り口を懐かしく思うだろう。

夕暮れ時に、会社に戻る車の中で、渋滞に苛立ちながらも、時事放談から猥談まで、その話術の巧みさと話題の広さに思わず微笑んで、すべての道は会社につながると、大船に乗った気分になった御同輩もいるのではないか。
冴えない父親の代表のような宮坂さんが、会社でも家庭でも粗大ゴミ扱いされ、行きつけの飲み屋でちびりちびりと酒を酌む姿に、深く同情した諸兄も多いのではないか。
私もそのクチである。

残念ながら小沢昭一の死去によって番組は終了してしまったが、さすが人気番組だけあって書籍やCD音源など、数々残されていて、あの語り口を思い浮かべながら、古本屋の鄙びた本棚で見つけては、少しずつ買っている次第。

この本は1995年に発刊で、東海道をテーマにしたもの。
カバーは車窓を模して四角い穴が空いていて、そこから琵琶湖を眺めることができ、カバーの裏は東京から大阪までの双六が印刷されている。
こういう凝った装丁は好むところで、電子書籍ではこの味わいは楽しめまい。

昭和生まれの私は、ページは人差し指で、あっち行けとばかりに携帯電話の画面の上を滑らすよりも、1枚1枚、楽しみながらめくっていくのが、性に合っている。
小学校の時代から、何かをめくることは楽しいものだ。

この本は、今や新幹線で2時間半で結んでしまう東京〜大阪間を、鈍行列車を乗り継いで行くのが粗筋。
あまりメジャーでない名所旧跡を巡ったり、B級グルメに舌鼓を打ったりと、肩肘の張らない気ままな旅が記されている。
昔の交通標語ではないが「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」を地で行っているような旅である。

岐阜にある男の遊園地、金津園の地名の由来を真摯に調査したり、セタシジミや山田大根といった今や食卓に上がらなくなった食材を探したり、それほど重要でない問題にこだわる姿がいい。
またベンチに座って、ぼんやりと若き女性の美尻に惚ける姿もいい。
これぞ、男の一人旅と言えよう。

あの名調子の語り口を頭に思い浮かべて読むのもよし、少しスケベなオジサンの道中記として読むのもよし。
どちらにせよ、肩の力が抜けること請け合い。四十肩も治ります。

11月 8, 2017 ブックレビュー, 店主のつぶやき |

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