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2017年10月25日 (水)

第3回 紙の上をめぐる旅






ピーター・バラカン『ラジオのこちら側で』(岩波新書)

深夜放送が青春の一頁だと言える世代は、いつ頃までなのだろう。
会社の若い同僚に訊いても、夜中に布団のなかで小さな音で、家族に知られずコソコソと耳を傾けたなんて話は聞いたことはないし、我が娘に至っては、SNSに夢中で、ラジオというメディアなどこの世に存在していないようである。
この本は、私たちのような世代が、うんうんと昔を懐かしみながら読む以外に、どの世代が共感できるのか心許ない。

当時のLPレコードは高価だった故に、音楽情報を得るのは、洋楽の新譜が流れることが多かったFM局でチェックし、その上で小遣いを掻き集めてレコード屋に走ったものだった。
内容が納得できなければ、レンタルで我慢した。
何せ、小遣いの半分以上が消えてしまうのである。
この本を読むと著者がイギリスから日本に渡って来た時と、音楽情報に飢えていた初々しい頃の私が、ぴったりと時間が重なり合う。

来日時はまだラジオDJの職には就ていなかったようだが、音楽雑誌にイギリスやアメリカの旬のグループやミュージシャンを積極的に紹介していて、しかもコマーシャルなヒットナンバーよりも、渋目のアーティストを好んでいるから、若い頃の私は、そのレビューをかなり参考にしていた。
ちなみにレコードコレクターズ誌で毎年開催される「今年の収穫」というコーナーで参考にしているのが、ピーター・バラカン、萩原健太、小西康陽。あとはコモエスタ八重樫ぐらいか。

その後、著者は『ザ・ボッパーズMTV』やニュースキャスターの仕事など、テレビにも活躍の場を広げていく。
しかし心の奥には学生時代に聴いたジョン・ピールやチャーリー・ギレットように良い音楽を流し、リスナーとDJが一体感のあるラジオ番組を作りたいと願っていて、デジタル配信が主流になったいる現在でもインターネットの音楽番組を制作して提供している。
その筋の通った仕事には、頭が下がる思いである。

ラジオの音楽番組が全盛の頃を思い出し懐かしむのも良いが、ラジオというメディアが決して古い媒体ではないと考えるのも良い。
震災の時に一番頼りになったのは、テレビではなく、ラジオだという声も聞くし。
この本は、魅力ある番組構成で、まだまだラジオには可能性があることを示唆してくれる。

10月 25, 2017 ブックレビュー, 店主のつぶやき |

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