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2017年8月 7日 (月)

第6話 阪急うめだ細腕繁盛記





イベントも5日目ともなると、塩辛い年齢のオヤジにはきつく、腰や膝が痛くなったり、目がショボショボしてきたり、意味なく溜め息をついたりしている。
開店から閉店まで、ほぼ10時間立ち通しだから無理もない。
「責任者、出てこい‼︎」
と叫んだところで、自分で取り組んだ企画だから、自分自身に返ってくるだけ。
ひとりブラック企業を演じていると言ってもよい。
いや、お志乃やお澄、それにチェリパシカ氏までも巻き込んでいるから、確信犯的なブラック企業かもしれない。

連日の接客で気がついたのだが、やはり買い物にも関西には特有の文化があるということ。
「兄さん、少し勉強してぇや。それがダメならオマケつけてぇ」
という関東人が想像する典型的な関西人を言っているのではない。そんな花登筺の描くような人物像は、すでに絶滅危惧種になっている。たぶん。
私が提議するのは、もっと深淵なもので、文化人類学に近く、マトリョーシカに対する行動パターンを地域別分析したものというべきか。
徹底的に掘り下げて調査すれば、学術論文になるような興味深い内容で、一考の価値ありものである。




では最初の考察。
まずは同じデザインが続くマトリョーシカは好まない傾向にある。
たとえばキーロフやセミョーノフのマトリョーシカを開けていっても、入り数で感動を呼ぶものの、最後のひとつを見届けると、これで終わりかいなと、少々不満げな顔をされる。
それよりも物語を題材にしたものや、中身がバラエティに富んだものを楽しんでくれる。
写真の猫マトリョーシカは、なぜか最後がネズミなのだが、そのサプライズ感がたまらないようだ。
「最後に猫の腹からネズミを救い出したというオチやな?」
「実は3個目あたりから、ネズミに変わっていたんちゃうの?絵も何が描いているか、わからんし」
とか何かしら、関西人特有の独り言をつぶやいてくれる。物語でオチがあるものなら尚更である。
同じのが続くデザインのものでは、この独り言を発してくれない。



次に第2の考察。
次にマトリョーシカの中身を確認する方法である。
「これ、中からぽこぽこ出てくるんやろ?」
「はい、中から出てきます」
と応えると、中身を確認するのにマトリョーシカを耳元に持ってきて、振って音を聞き出したのである。
「あゝ、入っとる。入っとる」
とマトリョーシカを開けることなく、中身の有無を判断する。耳で中身を確認する方法は、10数年来、マトリョーシカを取り扱って、初めて見る光景。
初めはそのお客様特有の判別法かと思ったのだが、この5日間で10人ほど、耳元でかしゃかしゃと確認を見ているので、これは何かしら根底に共通する民族性のでちがいがあるのではと推測。
それは菓子箱を振って小判の枚数を言い当てる、お主も悪よのぅ的な商習慣にルーツを見ることができるのか、もしくは開けるのが面倒というセッカチな気性から来るのか。
結論を導くのにはまだ性急であるが、この行動パターンは注目に値する。




最後に第3の考察。
とにかく計算が早く、小売希望価格を告げている間に、瞬時に消費税の1円の桁を計算して、小銭を用意しているお客様が多い。
世界規模でいけば、インド人の次に計算が早いのではないかと思うほど。
計算が苦手な私には、どういう脳のメカニズムで消費税の計算をしているのか、甚だ検討もつかない。

この3つの考察を徹底的に分析すれば、関西の独自性が明白になるのではないか。
文化人類学を志す人には、ぜひ取り組んでもらいたい。ブラック企業の主犯格の私が、足腰の痛みと引き換えに辿り着いた、一筋縄ではいかないテーマである。
活発な議論を期待したい。

(つづく)

8月 7, 2017 展示会情報, 店主のつぶやき |

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