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2017年8月 4日 (金)

第3話 阪急うめだ細腕繁盛記




長年の経験からいくと、木曜日はダレる曜日である。
週末にさしかかり疲れも溜まってくるが、あと1日働かなければならない。出来れば無理は控えたいと思う曜日なのである。
それは小売業にも表れていて、木の香でも木曜日は客入りは悪く、来られるお客様も何処となく覇気がないように感じられる。

だが大阪は違った。
さすが商業の街、大阪。うめだは華の都。
お客様の買い物に対する情熱がちがうし、眼の輝きがギラリとして曇りがない。
「マトリョーシカはロシアのもんかいな。よう遠いところから、ご苦労さんのこった」
「これマトリョーシカやろ?昔、うちのばあさんが持っとった」
「先日、ロシア旅行に行って、マトリョーシカ買うてきたのに、こっちの方が安いわぁ。損した〜」
独り言のように話し出すのだが、どう応対して良いのか解らず、それは残念でしたねと、NHKのニュース解説のように返すのが精一杯。ボケもツッコミもあったものではない。
たぶんこの独り言に上手く対応するのが、大阪で商売を成功させる第一歩であろう。



また以前、筋金入り関西女子のBさんに
「関西のおばちゃんは、眼に入ったものや思ったことは、口に出さないと落ち着かないんや」
とご教示してもらったがあり、それが現実として目の前で繰り広げられている。
まさに実地研修である。
「これマトリョーシカやな」
「マトリョーシカです」
「これ中からポコポコ出てくるんやろ?」
「ポコポコと出てきます」
「うわぁ、まだ出てくるん」
「出てきます」
「こんなもん、よく作るなあ」
「本当によく作りますねぇ」
これでは接客のイロハどころか、言葉を覚えたてのオウムである。
こんな対応ではBさんに
「ちょっとぐらい気の利いた対応しないと、東京の人はツンとして格好つけていて、イケ好かんわと、言われるで」
と叱咤されること間違いない。




ただマトリョーシカの魅力は、次から次へと出てくる入れ子であって、老若男女問わず、子供のように目をキラキラさせて、まだ次があるのかと見つめてくれるのが、ロシア買付に東奔西走した者として、何よりも嬉しい。至福の時である。
永遠に開けられるマトリョーシカがあったら、この至福の時も終わりなく続くのだと、つい思ってしまう。
「まだまだ出てきます」
とドヤ顔で言ってみたい。
「まだあるんかいな。マトリョーシカが、こんなケッタイなモンだと知らんかったわ。わかったから、もう堪忍してや」
と言われてみたい。


(つづく)

8月 4, 2017 店主のつぶやき展示会情報 |

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