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2017年8月15日 (火)

第1話 ロシア買付日記





9時間半のフライト後、入国審査を受けて、ようやくロシアの地を踏む。
ロシアの入国審査は人が地の果てまで並ぼうと意に帰さず、マイペースを崩すことなく、パスポートを昆虫の標本を見るように眺め、ひと息ついてから入国の判子を押す。
その時間、約5分。
そして休憩時間になれば、そそくさと席を外す。また次の職員がすぐに来ないことも多く、入国審査の窓口が閉じられたままの時も。
せっかちの国から来た人間にとっては、苛立ちで青筋を立ててしまいそうだが、もう10回以上もこの通過儀式を経験しているので、仕方ない、いずれは入国できるのだからと妙に納得してしまう。
私も大人に、いやロシア的人間になったものである。




ロシアとの時差は6時間。
北緯が日本より高いため、空を見上げると陽は高く、短い夏の陽射しが照りつける。
Tシャツ1枚で充分である。
この暑さだと、ついビールでも飲みたくなるのが心情だが、明日からの仕入れの準備が終わらないかぎりは、ぐっと我慢をする。
このあたりはロシア的な人間にはならず、誘惑に心揺れない大人でいることが、真の大人。




夕方、いつもの安食堂でペルメニとジャルコエ、それとクワスを注文。
クワスはロシア夏を代表する飲み物で、黒パンを発酵させた清涼飲料。独特の酸味が舌に心地よい。
二人分、1000ルーブルでお釣りがくる。
買付の旅で食費で散財するのは禁物。金の斧を持った愚か者。
食べ物は舌の記憶にしか留まらないが、工芸品はいつまでも眼を愉しませてくれる。
この境地になったのも、長年の経験の賜物と独りごちになるのも大人である。
結局ビールは飲まずに陽が暮れた。

(店主・YUZOO)

8月 15, 2017 海外仕入れ店主のつぶやき |

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