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2016年7月 6日 (水)

買付おやぢはセミョーノフをめざす(15)

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そしてさらに進むこと、1時間余り。

コブロフさんが言っていた橋に元に辿り着いた。

そこで眼にした母なる大河ヴォルガは、

日本人的な箱庭的視覚で見れば、

瀬戸内海のような海であり、

それ以外の言葉は見当たらない。

決して誇張ではない。

 

東京ドーム何個分というような中州が点在し、

白い波柱が岸辺に押し寄せて飛沫を上げ、

向こう岸が霞むほどに湛えた大いなる水の流れは、

押し合いへし合い北へ北へと驀進している。

渦巻いている。

中州を領地として譲り受けたら、

自らを一国一城の主と名乗ってしまいそうである。

それほどにスケールが大きい。

 

私の半世紀近い人生のなかで、

対岸が霞むほどの大河を眼にしたことはなかった。

中学生の時に和歌山の新宮市で見た

熊野川が一番の記憶である。

それでもその時分は、こんな大きな川があるのかと、

悲しいほどに深い感銘を受けたのだ。

ヴォルガ河と比べると、地味な記憶である。

  2

私は大きな樹木や山脈といった自然がつくりあげた

創造物を眼にすると、

不覚にも眼頭が熱くなる性分なので、

言葉にならない感動に包まれながら、

ロシアの大地の懐の深さに驚愕し、

己の存在の矮小さに恥じつつ、

熊野川と同様に感嘆の声を上げるしかなかった。

 

当然のことながら、長旅の倦怠感は消えている。

チェリパシカ氏もナッツを食べるのに

忙しかった口も、静止したままだ。

ヴォルガ河は大型の輸送船や観光船が行きかうのだろう。

錦帯橋のように橋の中心部が

小山のように盛り上がっていて、

上り坂の時はゆっくりと進み、

ジェットコースターのような気分になり、

頂点にさしかかるなり、ぱっと景色が広がると、

滑り降りるように下っていく。

一瞬眼にする、

深緑の大地とヴォルガ河とのコントラストが美しい。

 

「すごいね」

「まったく」

「日本にはない景色だね」

「まったく」

  3

15分ほどの時間が過ぎ、

車はセミョーノフがある対岸にようやく辿りついた。

ヴォルガ河のスケールの大きさに圧倒されたまま、

ふと気がつくと車の揺れでナッツの袋が踊り出して、

ズボンが粉だらけになっている。

 

もちろんこの景色を見た後では、

そんなことは取るに足らない出来事であるが。

 

 

※写真はゴロハビッツ博物館の展示品

 ゴロジェッツとは違います。

 次回、更新は7月9日です。

 いよいよ終盤です。やれやれ。

(店主YUZOO)

7月 6, 2016 海外仕入れ |

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