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2016年6月27日 (月)

買付おやぢはセミョーノフをめざす(12)

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いよいよ、セミョーノフへ出発である。

セミョーノフは天竺よりも遥か彼方にあり、

彼の地で開催される民族際は、民芸蒐集家が憧れる、

言わずと知れた桃源郷。

 

共にセミョーノフへの巡礼の旅にむかうのは、

コブロフ夫妻と愛娘のパリーナちゃん。

マトリョーシカ博物館の学芸員という

輝かしい経歴をもつナターシャ女史。

そしてチェリパシカ氏と私の日本人二人組。

 

コブロフさんの家からセミョーノフへは

直線で800kmぐらいあるのではなかろうか。

東京から岡山ぐらいの距離といったところである。

ロシアの地図で見ると、

消しゴム程度のほんの数センチに過ぎない。

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車は一路セミョーノフを目指し

ひたすら駆け抜けていくのだが、

窓から見える風景は、どこまでも続く原野と白樺の森、

ときおり小高い丘があって、鬱蒼とした森が現れる。

つまりは、寝ても覚めても、

たいして変わり映えのしない風景が永遠と続くのである。

 

しかし注意深く車窓を眺めていると、

森のなかに一軒だけある廃墟のような

家の煙突から煙が上っていたり、

見渡すかぎりの大平原のなかを

独り黙々と歩く老人がいたり、

詩的な想像を掻き立てられるような風景を

見つけることができる。

 

ロシア人は巡礼者や世捨て人に、

ある種の憧憬と畏敬が抱いているといわれるが、

これらの風景は、そのロシア的心情を、

習慣として具現化したということなのか。

とりとめのない思惑が現れては消え、消えては現れる。

 

たまに日本人憧れのダーチャ(別荘)の集落があると、

初めて海を見た少年のように無邪気な歓声をあげて、

ついつい無口になりがちな自分を奮い立たせてみる。

 

「ダーチャだよ!ダーチャ!」

 

チェリパシカ氏の反応は限りなく透明で

思考の半分は夢の世界に浸かり、

半分はガソリンスタンドで買った

ナッツを食べるのに使われている。

 

※次回、更新は6月30日です。

(店主YUZOO)

6月 27, 2016 海外仕入れ |

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