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2016年3月15日 (火)

買付おやぢはセミョーノフをめざす(10)

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ユーリーさんは小笠原以外にも、沖縄、アメリカ西海岸、

地中海を巡り、海中遊泳を楽しんでいるようで、

その時々の思い出の写真を見せてくれた。

各国の友人と並んで笑顔で写るユーリーさんがいて、

親交の篤さがしのばれ、自ら遊びに訪れたというより、

親善大使で呼ばれたという雰囲気さえ漂っている。

 

 

「(第6の耳が聞いた感じでは…)また小笠原に行きたいね。サンゴ礁も魚の群れも色鮮やかで何時間見ても飽きないよ。それに太平洋に沈む夕陽の美しさといったら!あれこそ、地上の楽園。至福の時というものだ」と言って目を細めた。

 

 

小笠原に行くには東京の日の出桟橋を出航して、

丸一日以上かかる。

それに毎日運航されているわけではない。

休暇をとってロシアから行くとなると、

小笠原に着くのに3日以上、滞在日を考慮すると、

最低2週間程度は必要となる。

 

ましてヴィザやバウチャーを申請しに、

片田舎のグジェリからモスクワに

何度か行く労力を考えるとなると、

よほどの情熱がなければ、小笠原に行こうとは思わない。

小笠原は地図上に存在するだけの

幻の島々と思ったほうが、諦めがつくというものである。

それに海のないグジェリで、どうやって

スキューバーダイビングの技術をマスターしたのだろう。

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そこには海で囲まれた国に住む人間にはわからない、

ロシア人特有の意志の強固さと、

海に対する計り知れない憧れがあるのではないか。

以前にコブロフさん夫妻が日本に来たときに、

葛西臨海公園から見える海やマグロが泳ぐ水族館に

歓喜の声を上げる姿が印象に残っているし、

ロシアの歴史も外洋に出るための

都市や港の建設が中心だったといえなくもない。

サンクトペテルブルグしかり、ウラジオストックしかり。

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「小笠原ねぇ」ふと呟いてみた。

ふだんは気にも留めなかった場所に楽園があるといわれても、

日常に追われて目前にあるものしか

見えなくなっている私には、

ある種の気恥ずかしさと一抹の淋しさに包まれた。

まだ目にしたことのない光景に対して

憧憬を抱かなくなっている自分に対してである。

 

自分の陶芸作品を自慢するより、

小笠原の自然を熱く語るユーリーさんに嫉妬してしまった。

 

コブロフさんは

小笠原が東京都内という事実を信じられない様子で、

東京の面積はどれだけあるのだと訊いてくる。

どう説明してよいのかわからない私は、

船で行けるところすべてが東京だと答えていた。

 

 

※写真の猫は本文とは関係ありませんが、

 ロシアで出会った心優しき猫たちです。

 

(店主YUZO)

 

3月 15, 2016 海外仕入れ |

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