« 買付おやぢはセミョーノフをめざす(2) | トップページ | 買付おやぢはセミョーノフをめざす(4) »

2015年7月19日 (日)

買付おやぢはセミョーノフをめざす(3)

_image

電車がモスクワ郊外に出ると、様々な物売りが現れて、

日本のテキヤのような見事な口上で、歯ブラシや

三色ボールペン、毛玉取り器などを売りつけにかかる。

テキヤは男も女も、老いも若きもいて、

擦り切れた鞄からから百円ショップで

販売しているような駄物を、

言葉巧みにその効力や利便性を述べるのだが、

ロシア語が理解できないわたしでも、

興味深く聞いていられる。

 

ロシア語が詩のように韻を踏む特徴があるせいか、

とても音楽的に聞こえるからかもしれない。

このテキヤの口上は、点数でいくと音楽面60点、

演技面65点、風貌面70点で、総合点65点とか

テキヤ評論家になるのも一興で、

車窓にあまり変化がないゆえ時間潰しにはなる。

あと勝手にアフレコをするのも面白い。

Photo_2

「おれの会社は先日倒産しちまってね。給料代わりにくれたのが、この歯ブラシさ。どうかしているよ、まったく。親愛なる紳士淑女のみなさん。そんな会社でも、この歯ブラシだけは大したもので、全ヨーロッパ歯ブラシ品評会で金賞を獲った優れものさ。なにしろ、毛の植えつけ方が、渦巻き状になっていて、しかもどの角度から歯を磨こうと、ちゃんと歯茎をマッサージするようにできている。おれはこの歯ブラシのおかげで、虫歯もなければ、歯茎から血がでたこともない。至って健康そのもの。

そんな優れものの歯ブラシが3本で、なんと100ルーブル!!

これはロシアが全世界に誇れる大発明ですぞ!!

理解していただけましたか。みなさん!!

あの薄らトンカチの息子が会社を引き継がなければ、この歯ブラシでロシアは世界から賞賛を受けることは、間違いなかったのだ!」

 

このなかで実際にわたしが理解できたロシア語は、

悲しいことに歯ブラシと3本で100ルーブルのみ。

それ以外はわたしのなかの6番目の耳が聞き取ったもの。

 Photo


販売していた中年男は、

額が禿げ上がってMの文字をかたどり、

肌の一部になったような薄汚れたシャツを着ていて、

生活苦が人生を水浸しにしてしまっている風貌。

その風貌とは裏腹に朗々ととおる声で、

歯ブラシの口上を朗々と語る様が、

田舎芝居のミュージカルを聞いているようで可笑しい。

 

ついつい小銭をポケットから出して買い求めたくなるのだが、

まわりを見回すと男がこの場所に存在していないかのように、

車窓を眺めたり、携帯電話を凝視したりしている。

 

男もこの道何十年のしたたかさが、

樫の老木のように根を張っていているのか、

乗客に買うそぶりがないと察知すると、

早々に次の車両へと移っていく。

未練など最初から持ち合わせていない。

 

※ロシアで撮影したものですが、

 今回も写真は本文とは関係ありません。

 

(店主YUZOO)

 

7月 19, 2015 海外仕入れ |

コメント

コメントを書く