« 純情こけし東北めぐり旅(1) | トップページ | 純情こけし東北めぐり旅(3) »

2014年1月12日 (日)

純情こけし東北めぐり旅(2)

Photo_3


 

鳴子温泉駅を過ぎて小高い丘を登りきったあたりに、

柿澤さんの店舗を兼ねた家が見える。

質素な佇まいは、

地元にしっかりと根付いた生活を感じる。

 

私たちが到着したことに気が付くと

柿澤さんは母屋から出てきてくれた。

「遠いところ、ご苦労さんです。それと覆面マスクありがとね」

近所の親しいお兄さん風な話ぶりは、

着飾らない性格というのか、

私の思う天才肌のイメージではない。

 

 

というか、第一声が覆面マスクへの

感謝の言葉のほうが気になる。

東北プロレス巡業の話だろうか。

もしくは新作こけしの話だろうか。

 

その後もayumiさんと柿澤さんの

覆面マスクについての話は続き、

柿澤さんの息子がマスクに興奮していたこと、

初めてつくったマスクの裏話など、

話題は蚊帳の外であるが、

1年ぶりに里帰りしたようで心が和む。

  Imag1781

ふと棚に並んだこけしに目を向けると、

伝統こけしが凛とした姿勢で並び、

その横には毛糸帽や麦わら帽子をかぶった可愛らしい

少女こけしが澄ました顔でこちらを見ている。

その愛くるしさに思わず私からも微笑みを返してしまう。

 

 

「このこけし、可愛いですね」

と話を向けると、

「これ、つくるのが面倒で、数多くはできないんだなあ」

と飄々と柿澤さんは応える。

自分の作品について多くを語らないところが、

天才肌の工人たる由縁かもしれない。

 

 

その後、柿澤さんのお母さんが淹れたお茶と

自家製のお新香をお茶うけに、悠々とした会話が続く。

小春日和の縁側にいるようだ。

さらさらと時間が流れていくのがわかる。

 

 

「ロシアで見たマトリョーシカの木地師の仕事は凄かったなあ」

「柿澤さん、ロシアに行かれたことあるんですか?」

「県の産業振興会で。面白そうだったから、申し込んだんだけど、誰も知り合いがいないし、空港の集合場所も聞くのを忘れてね。たいへんだった」

細かいことにこだわらない大らかな性格が

アダになったことを思い出したようで、

バツ悪そうに笑った。

 

 

その旅行で柿澤さんは、

セミョーノフの工場見学に行った際、

熟練の木地師が寸法も測らず、経験と勘だけで、

あっという間に入れ子をつくる完成させる様子に、

度肝を抜かれたぐらいに感動したそうである。

  Dsc_0215_2

「誰も興味ないんだもんなあ。すぐに懇親会場に移動だもん。ずっと見ていたかったのに」

「ぼくもセルギエフ・パッサードで見たときに衝撃を受けました。あれは神業ですよ」

「そうそう、神業ね」

「そうです。神業です」

 

とその後、ふたりはロシアの木地師の匠の技を思い出して、

ひとりごちに耽っている。また時間がさらさらと流れ出す。

心地良い時間である。

 

 

 

この悠久とした時間の流れに抱かれているからこそ、

あの純粋無垢な少女こけしが生まれてくるのだろうと、

ふと思う。

都会では、まず生まれることはない。

なぜかそれだけは確信があった。

 

(店主YUZOO)

1月 12, 2014 国内仕入れ |

コメント

コメントを書く