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2013年1月17日 (木)

グジェリ工場訪問記(5)

2012_024ようやくグジェリの次の駅に到着。

イグナチェボという名の駅で、

300mはあるかと思われる長く伸びたホームに、

真ん中に雨風をしのぐ程度の屋根が少しあるだけで、

ほかには何も無い。

もちろん駅舎などない無人駅。

  

 

この無い無いづくしの寂寥とした土地で、

グジェリがつくられているのかと思うと、

本当に待ち合わせ場所なのかと不安になる。

しかし同じく降車した人々の姿は、

何処を見ても視界に入ることはない。

もしかして地底に暮らしているのか。

何ともキツネにつままれたような話である。

  

「本当に、ここでよいのかな」

チェリパシカ氏がぼそりと呟く。

「とにかくコブロフさんに連絡するより、仕方ないね」

 

 

素晴らしいことに、この荒涼した大地であっても、

携帯電話は圏外になることなく、

しっかりと通じ、3コール目ぐらいで、

いつもと変わらないコブロフさんの明るい声が。

  

 

「駅から教会が見えないかい」

「何も見えない。線路と草原、それに白樺の林が見えるだけ」

「そんなことない。おれはイグナチェボの教会から電話しているんだから」

「どんな教会?」

「とにかく、きれいで美しい教会だよ!!」

  

 

その後、東を見ろ、西を眺めろ、南を拝め、

北を注視しろといった指示の末、

はるか遠く彼方の丘に、教会らしき建物が見えた。

猟師でなければ教会と判別できないだろう

というほどの彼方にあった。

  

 

駅から丘へと通じる道は、舗装されているわけでもなく、

前日に降った雨でぬかるんだ道に、

足を取られないよう、薄氷を踏むように進んでいく。

この時点で、私の頭からグジェリ工場見学は消えている。

というよりも運動会の行進している小学生の気持ちである。

  

 

四苦八苦しながら教会に辿り着くと、

コブロフさんが感慨深げにたたずんでいる。

半年振りの再会である。

いつものように堅い握手をして

お互いが健康であることを確かめ合う。

  

 2012_025

しかし何故、このような人里離れた教会で待ち合わせなのか。

コブロフさんは再び昔を懐かしむように教会の塔を眺める。

  

 

「ここで結婚式を挙げたんだよ」

 

 

その言葉が、私たちにも感慨が伝染して、

じっくりと教会を見た。

  

ロシアの教会というと、

たまねぎ型の塔がそびえる

ウスペンスキー大聖堂的なもの思い浮かべてしまうが

このような素朴なものが地方に行くと至るところにある。

  

 

それら全てが人々の生活に密接した教会であり、

結婚式のみならず、死者を弔うのも、

子どもの洗礼など一手に仕切るのだろう。

  

そう思うとこの教会が、

ウスペンスキー大聖堂よりも荘厳に思え、

信心深い気持ちになるから不思議だ。

 

 

私はまわりに影響を受けやすい方である。

 

(つづく)

1月 17, 2013 海外仕入れ |

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