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2012年11月26日 (月)

グジェリ工場訪問記(1)

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今日は買付け旅のメインというべきグジェリ工場訪問の話。

グジェリといえばロシアを代表する磁器であり、

白地に鮮やかなブルーで描かれた模様や絵は、

手書きならではのユーモラスな可愛さがあって日本でも人気。

リーズナブルな価格のせいか、ロシアでも愛用されている

いわばロシア版瀬戸物という存在。

 

前回、コブロフさんに

「次にロシアに来た時、行きたい場所があったら連れて行くよ」

と言われていたので、メールでグジェリ工場と伝えておいた。

マトリョーシカだけがロシアの工芸品ではない。

それに工場見学好きの私にとって陶器工場は、

空を飛ぶクジラのように魅力に満ち溢れている場所。

 

グジェリはモスクワから鉄道で40分程度の場所。

それなのに、何故かコブロフさんとの待ち合わせは次の駅。

(その理由は後で知ることになるのだが)

グジェリ方面はカザンスキー駅が始発で、

息子アントン君が大学に行く前に迎えに来てくれるのこと。

アントン君といえば旧版『地球の歩き方』に

コブロフさんと写真に納まっていた10才の少年。

もう大学に通っているのだから、

月日が経つのは光陰矢の如しよりも早い。

 

さてロシア鉄道について簡単に説明すると、

東京駅のように一箇所のターミナル駅から東西南北に

拡がっていくのではなく、行きたい場所、方向によって、

それぞれ発着駅が異なる。

たとえばセルギエフ・パッサードに行くにはヤロスラーブリ駅、

サンクトペテルブルクへはレニングラード駅という具合に、

駅名が行き先を示している。

その法則に従いモスクワ市内に9のターミナル駅があるのだ。

 

ちなみにヤロスラーブリ駅はシベリア鉄道の終着駅でもある。

もし帰りの旅費がなくなった場合は、線路沿いにひたすら歩けば

ウラジオストックまでは行ける。

あくまでも理論上は。

 

小さい頃、ローカル線の乗り鉄だった私は、

ロシアの鈍行に乗車できるというので、やや興奮気味。

ディーゼル車なのか、電車ならば釣りかけ式モーターなのか

と思いを膨らませている。

無事アントン君とも巡り会えて、いざ出発と行きたいところだが、

折り返しが電車が遅れているのアナウンス。

掲示板の発車時刻は0:00時と表示されたままである。

カザンスキー駅には日本の待合室のように、

雨風をしのげるようなガラス張りの部屋はなく、

肌寒い中ひたすら耐え忍び、列車の到着をじっと待つしかない。

忠犬ハチ公の心境。

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しかしアントン君はロシアの鉄道が時刻通りでないのは

心得ているようで、正統的ロシア的思考

「ニチェボー(仕方ないの意)」を決め込んでいる。

「あと30分もすれば着くでしょう」と予想なのか、慰めなのか

希望なのか、はたまた予言なのか、

アントン君は根拠のない展望の言葉を吐く。

 

すると、どうだろうか。

30分後に、列車が時間に遅れて誠に申し訳ないデスと

眉毛の下がった顔つきで入線してきたのである。

 

恐るべし、アントン君。君は預言者なのか?

(つづく)

 

(店主YUZO)

11月 26, 2012 海外仕入れ | | コメント (0)

2012年11月20日 (火)

ロシア語でテイクアウトは何という?

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今日は先日話した簡易食堂の話の続き。

その店ではジャルコエ(豚肉とじゃがいもを煮たロシア版肉じゃが)か

ボルシチを注文し、それでも腹が満たされないようならば、

もう一品注文する。

上の写真が、腹が空いたときに注文する逸品。

交通事故の現場でもなければ、バイカル湖の地図でもない。

れっきとしたハムエッグである。

 

ロシアでは日本のようにヨードだのカルシウムだの

化学飼料をふんだんに与えていない。

またコストが嵩むためか自然にちかい飼料を与えているため、

日本の鶏卵のように限りなくオレンジに近いイエローではなく、

限りなくイエローに近いホワイトである。

おかげで卵を買うと、家まで運動会のスプーン競走のように

割れないように慎重に運ばなければならないし、

もちろん黄身がぽっこりと丘陵状に盛り上がることもない。

 

写真を目を凝らして見れば白身の砂漠にのなかに

薄く色付いている部分があるでしょう。

そこがさまよえるオアシス、黄身である。

これを一日の仕事を終えて、ビールのつまみにすると、

あんこうの肝を食している気分になるから不思議である。

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さて本題である。

ある日のこと、まだ腹が満たされないのか、

チェリパシカ氏が美人おかみのところに行き

ピロシキを何個か注文している。

この光景、大食漢のチェリパシカ氏ならではの見慣れた光景で、

驚くに値しないのだが、注文したあとに「С тобой」

と囁いているのを聞き逃さなかった。

 

そして、こともあろうことか美人おかみも満更でもない様子。

はにかむように微笑んでいる。

「С тобой」。

直訳すれば「あなたと共に」、「あなたと一緒」であり、

ロシアの音楽や映画でも、よく耳にする言葉である。

どんなシーンで使われるかと、野暮な説明はしない。

 

もしかして今晩は、野宿かバスルームで寝なければならないのか、

独りどぎまぎしている私をよそに、

にこにこと笑みを浮かべてチェリパシカ氏が戻ってくる。

パックに入ったピロシキを大事に抱えて。

 

「チェリちゃん、今晩誘ったの?」と興奮気味の私。

「何のこと?」

私の意に反してピロシキに心を奪われたままのチェリちゃん。

「だって、С тобойって、囁いていたじゃん!」

「えっ???С тобойって、ロシア語でテイクアウトの意味だよ」

「●ДЖ????f@z××」

 

その晩は、チェリパシカ氏の言うとおり、美人おかみが

ドアをノックすることもなく、実に平凡な一日となったのだが。

ただテイクアウトとあなたと共にが、同じ表現とは信じ難い。

もしかするとチェリパシカ氏は、手玉に取られて玉砕されたのを

ごまかすためのテレで言ったのか?

本当にテイクアウト(お持ち帰り)の意味なのか?

謎が謎を呼ぶばかりである。

 

だれかロシア語に精通している方、

すっきりとサルにでもわかる言葉で説明していただけだろうか。

もやもやして眠れぬ日々が、日本にもどった今も続いている。

(※上の写真で美人おかみを想像してね)

(店主YUZO)

11月 20, 2012 海外仕入れ | | コメント (3)

2012年11月15日 (木)

「マトリョーシカEXPO 2012」見聞譚

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以前に紹介した沼田元氣さんが主宰する企画展、

「マトリョーシカEXPO 2012」に行ってきた。

ついでに仙台の秋の味覚を堪能しよう目論み、

交通費は極力抑えてのバス旅行。

 

仙台グルメを報告するのは「木のあしあと」の本意ではないので、

省略させていただき、バスと新幹線でどれだけ交通費が

違うのかだけを記すとする。

その金額差は約半分、逆に時間は3倍。

この違いを得ととるか、損と感じるかは、

旅の目的で分かれるところではある。

名所旧跡巡りに食指の動かない私にとって、

居酒屋に灯りがともる頃に着けばいいので、この差は得であった。

 

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前置きはさておいて、カメイ美術館で開催された、

この展示会をひと言で表すならば「ユニーク」。

こけし素材を元に、ロシアのマトリョーシカ作家および工場が、

それぞれの特長を生かして作品を仕上げる。

工場はその産地ならではの特色を、色づかいや技法で

見事な腕前を披露し、作家は筆づかいとモチーフで、

その個性と美を余すことなく表現する。

 

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テーマであった、「ロシアと日本との友情の架け橋」を飛び越えて、

木工芸の世界には、元々国境はないのだなと再認識した次第。

上記の作品など、無国籍な香りが漂って、実にユニーク。

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この企画を、こけしの里であり、震災復興を願う東北の地で、

催されたことは、荒野に咲く一輪の可憐な花の如く、

人々に安らぎと希望を与えてくれたように思う。

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さらにこの展示会を有意義な心温まるものにしたのは、

沼田元氣さんとセルゲイ・コブロフさんとの

マトリョーシカ対談と絵付け教室。

擦れ枯らしの年齢になり、肉体どころか涙腺さえも弱くなった私は、

コブロフさんと仲良く絵付けをしている光景を眺めているうちに

不覚にも涙。

来場者の笑いと歓声に包まれた、

終わってしまうのが惜しいと思えた一日だった。

   

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この対談で印象深い沼田元氣さんのひと言があったので記す。

「懐かしいという記憶は、自分が実際に体験したことでなくても、母や父が小さい頃に話してくれたことも含まれるんですね。私がマトリョーシカに強く魅かれる理由として、母の影響が多分にあるかもしれない。実は母はロシアで生まれ育ち、革命時に帰国した人なんです」 

ああ、この麗しき生い立ちと記憶。

心の底からユニーク。

 

私がマトリョーシカに魅了される記憶は、どこにあるのだろうか。

これからそのルーツを辿る記憶の旅に出かけようか。

 

※ユニークという言葉は、多くの意味があるらしく、

私たちが思う以上に多彩で奥深いものらしい。

或るひとりのロシア人にとっては。

 

(店主YUZO)

 

11月 15, 2012 展示会情報 | | コメント (0)

2012年11月 7日 (水)

行きつけの店の美人おかみ

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今日はロシア料理の話。

よくお客様に「ビーフストロガノフを召し上がりました?」とか、

「キエフ風カツレツは想像より美味しかったわ」

と聞かれるのだが、実際のところ、

私がそれらを口にすることは、ほとんどない。

ゆえに満身の笑みで「それはよかったです」と応えるだけである。

 

もちろん今回の仕入れも同様。

ロシアのガイド本によると、ロシア料理店の目安として、

レストラン、カフェ、スタローヴァヤという順で格付けされている。

私たちが足蹴く通うのは、スタローヴァヤの以下のランク。

コンビニのフードコーナーのような格付けが不可能な店である。

 

モスクワの物価の高さは世界有数であり、

レストランでひととおり注文すると、

日本円にして一人当たり3000円は飛んでしまう。

このスープ一杯のお金で、あの作家のマトリョーシカが買えると

考えると、なかなかレストランの扉を開くことはできない。

 

断っておくが、

その気持ちはマトリョーシカに対する限りない愛情というより、

腹さえ満たせれば味は問わないという浅ましい考えによるものだが。

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さて今回も通ったのは、ホテル近くのいつものコンビニのようなお店。

このお店でちょっとしたサプライズがあった。

 

前回の仕入れのとき、経営者と思われるオジサンが、

店を切り盛りしていて、気分次第で早く閉店したり、

ほとんどのメニューがつくれなかったりと、

実にロシア的な経営だったのだが、

資本主義の波についていけないのか、オジサンは去り、

中央アジア出身らしい目鼻立ちの整った妙齢の美人に

変わっていたのである。

 

それにともって、京成線立石駅のモツ煮込みのごとき

塩っぽく滋味深かったボルシチは、

豚肉がごろごろと入った新鮮スタミナスープに変わり、

毎日来ても飽きがこないほどメニューも増えた。

 

ちなみにロシアではスープは飲むといわず、

食べると表現するそうである。

そしてボルシチの味も店毎、家庭毎に異なり、

系統だって分類するのは不可能だと言われている。

 

私たちは目尻を下げながら、

ペレストロイカ的に劇的に変わったボルシチを食べながら、

横目で美人を盗み見するのが日課となった。

しかもこの美人、男心を虜にさせるのが、なかなか上手く、

私が「今日は誕生日だったんです」と呟くと、

気前よくビールをプレゼントしてくれるのである。

「おめでとう」と一言添えて、ニコリと微笑んで。

 

ああ、老兵は去るのみ。オジサン何処へ。

(店主YUZO)

11月 7, 2012 海外仕入れ | | コメント (0)

2012年11月 2日 (金)

阪急うめだ店「SOUQ」にマトリョーシカ!

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今、関西で一番熱いデパート阪急うめだ店。

実は25日にオープンした10階にある「SOUQ」に

マトリョーシカが並んでいます。

 

実はお得意様から、

「阪急デパートでオリガ・イリーナ姉妹のマトリョーシカを

見たのですが、あれは木の香で扱っているものですか?」

というお問合せを受けたので、

これはまずいと思いブログアップした次第です。

 

そうです。正解です。

今回、阪急うめだ店のバイヤーと打合せして

展示したマトリョーシカなのです。

オリガ・イリーナ姉妹の作品やまだ展示していませんが、

コブロフ工房の青いサンタクロースやビーズマトリョーシカ

なども順次登場する予定です。

 

千葉まで行くには、月の裏側に行くぐらい遠すぎると

嘆いておられた関西のマトリョーシカ・ファンの皆様、もう安心です。

10階に行けば可愛いマトリョーシカに会うことができます。

今後は企画展なども考えていますのでお楽しみに。

 

PS次回のブログネタはロシア買付けの話にしますので、

楽しみにしているお客様、もうしばらくお待ちくださいね。

筆不精なので。やれやれ。

 

(店主YUZO)

11月 2, 2012 店主のつぶやき | | コメント (0)