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2012年9月28日 (金)

スミルノフさんの遺作

Photo_7   

いよいよ、ロシア買付けの初日。

気温は13度と幾分か肌寒いが、初日というと

いつも気分が昂揚する。

新しい作家との出会いがあるか、

クリスマスもので目新しいデザインが出ているか、

掘り出し物のバッチはあるかと、あれこれと頭を巡っているうちに、

朝食の時間さえ惜しく感じてしまう。

 

ああ、この気持ち。日常では味わえない感覚。

これだから何があろうと、買付けはやめられないのである。

 

まずはチェリパシカ氏と通称チャイナバックを抱えて、

各作家さんの元へ、発注していたものをとりにいく。

ここ数年は年一回の買付けだからと、つい気持ちが昂ぶって

数多く頼んでしまうのだが、目の前にしたときに、

その量の多さと持ったときの重さに驚愕し、

海底の蟹のように後悔するのは、毎度のこと。

 

さしずめその量は不忍池に泳ぐアヒルのごとく、

その重さは上野動物園のオオアリクイのごとしである。

 

お客様の喜ぶ顔が見たいから頑張って買付けしていますと、

綺麗事を言うつもりはない。

瘤取り爺さんに出てくる強欲爺さんが、

あれもこれもと欲張るうちに、自分でも背負えないほどの

葛篭を選んでしまった心情に近い。

ちなみに、この日の買付けした量を測ってみると、

60kg以上あった。

マトリョーシカは愛情が篭っているだけに重い。

道理で、チェリパシカ氏も私も、

シェルパーのように無口になるわけである。

 Photo

Photo_3 

しかし今回の買付けでは大きな収穫があった。

昨年惜しくも亡くなったスミルノフさんの作品が見つかったのである。

それが上記の写真。

 

依頼していたI 君によると、奥様が7個ほど持っていたらしい。

この13個型のお腹の絵は、得意のロシア民話ではなく、

雪遊びしている村の風景になっている。

しかも一番小さなマトリョーシカまで細かく描かれた力作。

 

今までの作品とは微妙に筆のタッチが違うので、

もしかすると色付けは奥様が行ったのかもしれない。

晩年、細かい手作業がおぼつかなくなった

スミルノフさんを気遣い奥様が引き受けていたのか、

もしくは突然の他界後に、未完成の作品を

奥様が引き継いで完成させたのか。

 

細部まで、じっと作品を眺めるにつれ、胸が熱くなる。

 

この作品をつくっている間、

別れの時が静かに近づいていることの知らない二人は、

幸せに包まれながらマトリョーシカを描いていたのだろうか。

そう願わずにいられない。

 

買付けにも、物語はある。

(つづく)

(店主YUZO)

9月 28, 2012 海外仕入れ | | コメント (2)

2012年9月24日 (月)

シエレメチェボォとドモジェドヴォ

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ホーチミン-モスクワの飛行時間は約10時間。

東京-モスクワ間とほぼ同じである。

この10時間というのが厄介者で、以前ならば読書で

やり過ごすことができたのだが、今は薄暗い読書灯の下では、

眼がしょぼしょぼしてしまい活字が滲んでしまう。もしくは踊りだす。

ゆえに惰眠を貪るか、

他愛のない空想で時間を潰すしかないのである。

 

「マトリョーシカ博物館を日本に建てるならば何処?」

「最後に残ったニホンカワウソは、何を思って暮らしていたのだろう」

「『子』という漢字をバランスよく書くのは、『薔薇』を覚えるより難しいかも」

 

そんな空想を200ぐらい重ねているうちに、機内放送が流れ、

あと30分ほどでドモジェドヴォ空港に着くという。

 

ベトナム航空の印象を簡単に記すと、

座席が段ボール箱のように狭い、食事はまあまあ、

ビールはツボルクかスーパードライ

(寝付け薬と称して4本飲んだが眠れず)、

スチュワーデスは少し不機嫌そうだけど、てきぱきと働いている

という感じ。

ロシア人は座席の狭さに辟易としていたようで、

消灯した機内を冬眠前の熊のように、うろうろと歩き回っていた。

 

到着。

初めてのドモジェドボォ空港。

 

モスクワにはシェレメチェヴォとここのふたつの国際線の空港があり、

チェリパシカ氏によると、ドモジェドボォは

入国手続も簡単で手際よく、ストレスをまったく感じないという。

 

思い返せば、シェレメチェヴォ空港では良い想い出がない。

入国に最長6時間待たされたり、賄賂を求められたり、

書類の不備で翌日まで拘束されたり、

記憶が蘇えるだけで、

どっと疲れがでるような苦いものばかりである。

そのおかけで、無意識のうちに、モスクワ市内に着くまで、

飛行機10時間、入国手続2時間、移動に3時間と

計算を立ててしまっている。

 

さてドモジェドボォは?

まず入国手続。通常、入出国カードを機内で書くのだが、

このカード、しょぼくなった擦れ枯らしの眼には、

米粒に仏画を描くようなもので、細書きのペンを用意して、

邪念を捨てて一気に書き上げなければならない代物。

しかも滞在中は、その半券を常に携帯していなければならず、

紛失すれば面倒な問題が降りかかってくる、たいへん貴重なもの。

 

ドモジェドボォでは、パスポートを渡すだけで、

必要事項を入力して印刷してくれる。

画期的なサービス!!もしくは革命的前進!!

 

そして荷物が出てくるのも早いので、30分ほどで何事もなく入国。

早々に空港とモスクワ市内を結ぶ「アエロエクスプレス」の乗車。

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(ノンストップで空港とモスクワ市内を結ぶアエロエクスプレス)

 

余談ですが、これからモスクワへ旅行を計画をしている方、

どちらの空港を使用している航空会社かもチェックしてくださいね。

シェレメチェポォ空港であっても、

アエロフロートならばストレスなく入国できます。

それ以外は私の経験からは「やれやれ」もしくは「あれあれ」です。

ちなみにJALはドモジェドボォです。

(つづく)

 

(店主YUZO)

9月 24, 2012 海外仕入れ | | コメント (0)

2012年9月20日 (木)

まずはベトナム

Photo_5 まずはベトナム。ホーチミン市。

経由地とはいえ初めて訪れる国である。

ベトナムに関する知識といえば、40年程前アメリカと戦争があり、

ホーチミン市はサイゴン市と呼ばれていた程度のものしか

持ち合わせていない。

あとはフォーという米の麺を食べ、アオザイという女性の美しさを

さりげなく演出する民族衣装があるとか。

 

たぶん東南アジアの白地図を目の前にして、

それぞれの国名と首都を書き入れなさいという問題が出されたら

タイ、ベトナム、ミャンマーが混同してしまうぐらい、

本当にその程度の知識である。

後にも先にもない。

 

通常モスクワ直行便の45%OFFの激安チケットだけに、

ホーチミン市に着いたのは、夜中の11時。

少ない街灯は雨で濡れた路面を照らし、

時々、オートバイが申し訳なさそうに通り過ぎていくだけ。

そして東南アジア特有のミストサウナのような蒸し暑さ。

Tシャツ一枚で生きていける国である。

混沌とした街並み。ジャングルにも似た閑散。

動かぬ蒸した空気。脂に満ちたねっとりした臭い。

それがベトナムの第一印象である。

2012                      (朝食のフォー。鳥の出汁がきいて美味い!)            

 

そして朝。ところが朝。

空港に戻らねばと眠い目をこすりホテルの前に出ると、

オートバイの、オートバイによる、オートバイのための道と化している。

国民全員参加のオートレースが開催されているような、

インダス河の流れを眺めているような、夥しい数のオートバイがある。

蟻の群れである。

 

ホテル前を出発したタクシーは、明らかに空港とは逆方向。

どこかの交差点でUターンしなければならないのであるが、

蟻の群れは象をも倒すと言われているがごとく、

車窓寸前のところを、二人乗り、三人乗り、四人乗り、

果物を積み上げたもの、片手は自転車のハンドルを握っているもの、

人間が考えつく限りのオートバイの乗り方すべてが、

幾重にもなって通り過ぎていく。

 

昨夜私が見たホーチミン市は幻想である。

もしくは暑さによる幻覚である。

 

「はたして空港に着けるのだろうか」と思わず溜息を漏らすと、

タクシーはそれを嘲笑うかのように、

先の交差点で意図も簡単にUターンしたのである。

もちろん一台のオートバイも巻き込むことなく、

車体を擦られるこもなく。

 

「×△дё■・・・・?」

私がその鮮やかな運転に感心していると、

今回も寝起きを共にするチェリパシカ氏が

「帰りはベトナムに20時間滞在しなければならないよ」

と不適な笑みを浮かべている。

 

モスクワの買付で疲労困憊した後、ベトナムの雑多なエネルギー。

今回は、トライアロン級の限界に挑戦する旅になりそうである。

(つづく)

  

(店主YUZO)

 

9月 20, 2012 海外仕入れ | | コメント (0)

2012年9月18日 (火)

ロシアより帰国しました!!

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ロシアより帰国しました。

さすがに格安だったとはいえ、ベトナム経由では、

草臥れたおっさんの身体には、かなり堪えました。

 

寒い国から暑い国へ。

そして残暑のきつい国へと続く旅は、

時差と温度差が目まぐるしく、

先までTシャツ一枚でへらへらと過ごしていたのに、

入国と同時に着膨れたエスキモー風情に。

そして帰国時は、スーツケースのなかに

ひとつでもマトリョーシカを持ち帰りたい逸る気持ちゆえ、

無理して重ね着、さらに重ね着。

30度を越す日本の残暑を心底呪ったのだよ。

 

とうわけで今回の仕入れは、血と汗のにじんだ物語。

グジェリの工場に行ったり、スズダリ、ウラジミールを訪ねたり、

新たに5人のマトリョーシカ作家に出会ったり、

本田選手の記事を書くライターに会ったり、

鉄道に乗って旅したり、ロシア語の比較級を話したりと、

エピソード盛りだくさんの日々が続いたのだね。

 

次回より順を追って、

ロシア仕入れの真実をお話したいと思います。

ローマは1日して成らないかもしれないが、

モスクワだって負けてはいないからね。

 

お楽しみに。

(店主YUZO)

 

9月 18, 2012 国内仕入れ | | コメント (0)

2012年9月 5日 (水)

ロシア仕入れに行ってきます

Map_city_moscow_2  

明日6日より、ロシア仕入れ旅に行ってまいります。

今回は、新たな作家を巡り会うために、

セルギエフ・パッサードを中心に、また陶器の町グジェリに行って、

チェブラーシカや動物のものを探したいと思います。

 

あと本の市場にいって、絵本を買ってきます。

これからロシア語を学びたい人にも親しみやすい

「三匹のくま」、「赤頭巾ちゃん」、「大きなかぶ」などの

絵本を手に入れることができればと目論んでいます。

 

・・・というより、自分がロシア語勉強に欲しいのですが(笑)

 

今回の仕入れは、なんとベトナム航空で

ホーチミン経由という荒業で行くことになったのですが、

なぜか直行便や北京、仁川経由よりも、断然に安い。

燃料も多く使うし、搭乗時間も長くなるのに、

なぜこんなにも安いのか?

国内でも、航空運賃が半分以下の格安があったりと、

なぜだろうと疑問が湧くのも無理もないところ。

 

私たちの知らない間に、

どんどん世界は小さくなっているのかもしれませぬ。

 

今回は、いつも以上にロシアの風景や工房の様子を

写真に撮ろうと思っています。

戻り次第、ブログにアップしていきますので、お楽しみに。

 

(店主YUZO)

9月 5, 2012 店主のつぶやき | | コメント (0)