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2012年5月16日 (水)

今ユーラシアが熱いのだ

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先回、ユーラシア大陸の鉄道旅行記を紹介したので、

引き続き、ユーラシア関連の少しお堅い本を。

堀江則雄著『ユーラシア胎動』(何だかんだの岩波新書)

 

2010年に出版された本で、上海協力機構を中心とした

最近の著しいユーラシアの経済発展と、

活発な相互貿易の状況を報告している。

 

政治に疎い私は、上海協力機構なるものを全く知らないが、

ロシアや中央アジアの豊富な天然資源と

世界の工場として経済を牽引している中国が深く結びついて、

驚異的な発展を遂げて、活気に満ちているという。

 

あのシルクロード鉄道も(ここではユーラシア鉄道と呼んでいる)

人員や貨物の輸送に重要な役割を果たしている。

前書では千一夜を要した列車の台車交換が、この14年間で

2時間の作業に短縮されているのも、その表れか。

 

好景気に沸く背景には、ロシアと中国の間で、

何百年と続いた国境問題を完全に克服し、

お互いの合意の下、

国境線を明確にしたことを挙げている。

それに追随するように、天然ガスや石油の

パイプラインがユーラシアにひかれたことにあるという。

 

著者はこのダイナミズムなユーラシアの胎動について

「……「近代」が始まって以来の世界秩序の転換という時代認識である。資本主義の勃興以来ずっと西欧という「西」がアジアなど「東」を含む非西欧世界を支配してきた。(中略)その世界秩序の転換が「西」から「東」への“重心”の歴史的な移動として起きているのである。」

と分析している。

 

その言葉の裏には、従来のアメリカ追従路線でいくのではなく

同じアジアの国としてユーラシアに眼を向けるべきという

主張がうかがえる。

北方領土問題に固執するあまり、硬化して進まぬ関係から、

まず具体的にシベリア共同開発や日本海貿易の活性化を

始めて両国の関係を改善すべきという指摘も。

 

私ごときが、訳知り顔で政治や経済を

声高に語るのは本意ではない。

ただ、もっとロシアについて日本人が知る機会が増えれば、

もっと相互理解が深まればと願うのみである。

 

さてこの本で気になった記述を。

「カザフスタンの商品はウォッカなどの種類、マトリョーシカ、ナイフ、それに皮革物の土産品類だけで、寂しいかぎりだ」

 

カザフスタンのマトリョーシカ。

セミョーノフからの流れ品か、それともカザフスタンの国産か。

実に気になるところ。

思わず、寂しいかぎりな品物ではないと、

少し声を荒げてみた次第。

(店主YUZO)

5月 16, 2012 ブックレビュー |

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