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2012年5月14日 (月)

ユーラシア大陸で酒三昧の本

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古本屋を巡っていると、ときどき一瞬脱力してしまうような

題名が眼に飛び込んでくることがある。

そして帯が付いている場合は、

その短かなコピーにさらなる脱力を強いられる。

 

種村直樹著『ユーラシア大陸 飲み継ぎ紀行』(徳間書店)。

帯には「ヨーロッパ、中国の地酒に酔いしれながら、総鉄道距離17000kmの大列車旅を敢行。酒好き、汽車旅ファン垂涎の1冊!」とある。

 

ユーラシアの大平原を車窓を肴に飲み続けるのは、

常人ならば馬鹿げていると一笑しかねないが、

酒好き、汽車の旅が好きな輩にとっては、

贅沢この上ない旅と言えよう。

もちろんこの旅の経由地としてロシアも入っている。

 

これだけの条件が揃っていれば内容が悪いはずがない。

さっそく購入。

 

ポルトガルのポルトでワインを起点に、へレスのシェリー酒、

フランスのコニャック、ベルギーでビールという具合に、

ポーランド、ベラルーシと続く酩酊汽車の旅。

先日紹介した『酔いどれ列車モスクワ発ペトゥシキ行』

までとはないが、途中体調不良に見舞われながらも、

初心貫徹。

とにかく現地につけば本場の銘柄を

しっかりと五臓六腑に流し込む。

酒呑みの鑑である。

 

さて気になるのはモスクワの様子。

この本が出版されたのは1996年だから、ソビエト崩壊後、

まだ経済が混乱し、安定しない頃になる。

 

「ホテルーインツーリストのピザ屋が、米ドル主、ルーブル従のメニューを置いていたのは、ほとんど外国人ばかり利用する店なのだろうと、さほど気にならなかったものの、市内で外国の通貨がおおっぴらに流通しているとは驚いたことだ。ルーブルが気の毒である」

 

期待したほど興味をひく記述は少ない。

ロシアに限らず、もっと町の人々と交流してくれれば、

旅行記に奥行きが出るのにと悔やまれる。

まあ著者は鉄道専門のルポライターだから仕方ないが。

 

ただ1992年に開通したウルムチから西安を結ぶ

シルクロード鉄道の記述は面白い。

線路の幅が異なる路線で結ばれているので、

幅に応じて台車交換の作業が入るのである。

その作業の段取りが大陸的というか、

シルクロード的な悠久の時間というか、

千一の夜を越えるかのようである。

 

約一ヶ月近い酔いどれ旅行の締めくくりとして、

千葉県の酒々井町に降り立つ。

鉄道好きならではの選択。

シブイ。

(店主YUZO)

5月 14, 2012 ブックレビュー |

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