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2012年4月 9日 (月)

20年前のロシアに留学

 

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古本屋をめぐりをしては、ロシアに関するを見つけては

買い求めるようにしている。

文化、芸術だけでなく、歴史、文学、

あまり好みではないが政治にについても、

仏頂面のエリツィンや沈鬱な表情のゴルバチョフに

苦笑いしながら手を出している。

 

すでにソビエト崩壊から20年。

日本人のロシアへの関心と興味は、

例のごとく薄れてしまったようで、古本業界では、

特価本や店頭ワゴン置きの状態。

安く買うことができるので嬉しい反面、

背表紙が日焼けした古本たちが哀れにさえ思う。

 

その特価本のなかに見つけたのが

森千種著『零下20度でアイスクリーム』。

著者はフジテレビのアナウンサーで、

社内制度を利用してモスクワ大学に留学。

留学中に91年のクーデターで揺らぐモスクワを

間近にしたという貴重な経験している。

 

しかし興味を持ったのはクーデターの生の声でなく、

慢性的な物不足と驚異的な物価の高騰に、

サービスという概念がまったくない紋切り型の行政機関。

自国の通貨よりもドルが幅を利かすという情況は、

自分が行くようになった2000年以降のロシアと、

月の表と裏ぐらい違うということ。

 

ロシアが短期間で経済や体制を変革してきたことを、

否応なく知らされる。

 

西側のファーストフードの典型、ピザハットが開店した頃の

市民への対応が興味深い。

ドルかルーブルの支払いの違いで、

席やサービスが露骨なほど異なり、

貨幣価値の高いドルが店の応対が良く、

オーダーも取りに来て待たせることがない。

もちろん同じ商品であっても、ルーブルで買うより断然高い。

 

ドルを持たない市民は羨望の眼差しで

ドルで買う人を見つめながら、ルーブルの長い列に並ぶ。

 

こういったエピソードを

著者はジャーナリストの目線で市民生活を描かず、

ひとりの留学生としてロシアを見つめているだけに、

身近な出来事に感じて飽くことがない。

 

この厳しい情況と知りつつ、

果敢にもロシアに留学した著者の好奇心に

ただ、ただ敬服。

ロシアでの留学生活を肌で感じることができる好書だと思う。

ただし20年前だけれども。

 

(店主YUZO)

 

4月 9, 2012 店主のつぶやきブックレビュー |

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