マトリョーナという名の君を探して
マトリョーシカを扱っていて度々思うのは、
その名前の由来が何かということ。
ネットでは当時流行していた女性の名前、マトリョーナから
きていると簡単に書かれているだけで、その先も後もない。
限りなく白紙である。
つまりマトリョーシカの名前は、日本的に言い変えれば
「花子ちゃん」ということになるのだが、
そう易々と答えに辿り着くとは思えない。
というのも未だかつてマトリョーナという名前の
女性に会ったことも、目にしたことも無いのだ。
ナターシャ、イリーナ、オリガはスポーツや演劇などで
何度も見つけることができるのに、
ロシアの花子ちゃんの名は一度たりとも耳にしたことがない。
100年経って、マトリョーナの名前は
受け継がれず壊滅してしまったのか。
それとも架空の人物だったのか。
ちなみに2010年のモスクワで人気の名前は、
1位マリーヤ、2位アナスタシア、3位ダリーヤ、4位アンナ、
5位エリザヴェータだそうである。
日本でも花子と名づける親は、今や無きに等しいから、
さもありなんと肩を落とすべきだろうか。
ところがである!!
ネクラーソフというロシアを代表する詩人の作品
「だれにロシアは住みよいか」の一節に
マトリョーナは高らかにうたわれていたのである。
マトリョーナ・チモフェーエヴナは堂々とした女
肩 身体 幅ひろく 丈夫で三十八ぐらい
きれいな白髪まじりの髪 目は大きくてきびしく
まつげはとっても濃く 厳格で浅黒い
白いルパーシカの上に みじかいサラファン
肩に鎌
風采、風貌、風格すべてが、
マトリョーシカそのものを表現しているようではないか。
マトリョーナという名前が流行の名前とまでは判断つきかねるが、
大詩人の作品中でタフな百姓女として
力強く描かれていたのである。
この詩が書かれたのは1873年。
最初にマトリョーシカがつくられた年の十数年前である。
もしや、この詩がマトリョーシカの由来?
気持ちが昂ぶるあまり、そう結論づけてしまいそうである。
ああ、
一度でもいいから生身の人間のマトリョーナに会ってみたい。
(店主YUZO)
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