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2011年12月 8日 (木)

荒木経惟・藤井誠二「開国マーチ」

Photo_2  

日本にはたくさんの外国人が生活しているのは周知のとおり。

ただどのようなコミュニティをつくり、

どんな生活をしているかまでは、あまり知られていない。

謎のままである。

仕事を共にすることがないかぎり、たとえ近所に住んでいても

知ろうとも思わないのが実情か。

 

その日本国内でありながら知られていない内なる外国に、

ずんずんと分け入っていったのが、この本である。

 

さすが天才とうたわれたアラーキーの仕事。

異国で暮らし祖国を思う外国人というような

感傷的なショットは一切なく、

写真から中華料理の油やキムチ、ニョクマムの臭いが、

むんと鼻をついて咽返るようである。

とにかく登場する外国人は日本人のように草臥れていない。

エネルギーに満ち溢れている。

 

経済的な理由で出稼ぎに日本に来るにしても、

祖国を離れている限り、この国で生きていかなければならない。

それならば辛いと悲しむより、人生を楽しんだほうがいいと、

心に決めているかのようである。

 

その屈託のない雰囲気が自然と写真に映ってしまうのは、

周りの人々を(外国人でさえも)巻き込む

アラーキーの持つ独特の魔力のおかげだろう。

アラーキーという大釜のなかで、ぐつぐつと煮込まれて、

国名や人種は判別できなくされて、

ひとりひとりの人間に剥き出しされている。

フィリピンも、タイも、韓国も、ブラジルも、ラオスも、中国も、

ペルーも、ロシアも、イスラム教も、仏教も、キリスト教も。

まさにエネルギーとエネルギーの核融合。

 

自粛、経済停滞、円高と、今の日本は沈滞ムードにある。

それに同調して、生きるエネルギーまでも失っていないだろうか。

 

またこの本では、在日外国人についての法律の実情、

習慣の違いからくる問題点なども載せてあり、

日本に簡単に外国人を受け入れない土壌があることを、

日本で起きた外国人にまつる事件を下敷きにルポしている。

この島国根性丸出しの閉鎖性が、

真の国際性を持ち得ない原因となっていると論じている。

この筆も熱い。

 

エネルギーに満ちた写真と熱い筆先。

その相乗効果で独特のカオスを生み出している本である。

(店主YUZO)

12月 8, 2011 ブックレビュー |

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