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2011年12月30日 (金)

山之口獏「定本山之口獏詩集」

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2011年も残すところあと2日。

今年もいろいろな出来事がありましたと締めくくるのも

簡単だが、今年ばかりそうは済まされない。

 

震災が安全神話を根本から薙ぎ倒しただけでなく、

誤報、無責任、保身、虚偽、饒舌、二枚舌が

連日繰り返されて、

どんよりとした憂いに胃のあたりが苛まれたかと思うと、

奇跡、復興、友情、連帯、絆、信念に

ふと息のつまった胸をなでおろすという1年であった。

この震災を境にして、情報を鵜呑みすることはなくなり、

価値観の転換を余儀なくされたといっても過言ではない。

 

このような地獄絵図に目を瞠らした以上、

自然もしくは地球を人智、科学、技術でコントロール

できると過信していたことに猛省すべきで、

さらなる巨費を投じてバベルの塔のごとき防波堤や

原子力発電所を建てたとしても、

それを嘲笑うかのように、自然は想像を絶する力で、

または百年千年という長い時間をかけて、

それを破壊し瓦礫に変えてしまうだろう。

 

生活に快適をもたらしてきた原子力には、

一旦暴れ出したたら止めることができない怪物の顔が

安全という覆面の下にあることを厭というほど思い知らされた。

そもそも快適な暮らしとは何ぞやと立ち止まってみることを

迫られのが今年なのかもしれない。

 

山之口獏という詩人がいる。

沖縄に生まれたその人は、戦争を憎み、原爆や水爆実験を

繰り返す国家の愚かさを憂いたが、

ただその飄々とした語り口はユーモアと風刺が、

ほどよくブレンドされて思わず微笑まずにはいらない。

日本には類をみない稀有の詩人である。

また貧乏生活で金策に窮していた生涯でもあったが、

敢えてそのような生活を望んでいた節もあって、

それが生活臭と人間臭を帯びていて、

実に良い味をだしている。

 

「座蒲団」と題した代表的な詩を紹介。

 

座蒲団

土の上には床がある

床の上には畳がある

畳の上にあるのが座蒲団でその上にあるのが楽といふ

楽の上にはなんにもないのであらうか

どうぞおしきなさいとすすめられて

楽に坐ったさびしさよ

土の世界をはるかにみおろしているやうに

住み馴れぬ世界がさびしいよ

 

もし詩人が現代を生きていたら、

今回の震災の一部始終を

どのような言葉で語ってくれただろうか。

(店主YUZO) 

12月 30, 2011 ブックレビュー |

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