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2011年12月 4日 (日)

地球の裏側の儚き歌声

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12月に入ってから急に冬らしくなった。肌寒い。

今年は暖冬になるとか、温暖化が一段と進んだとか、

他愛のない酒場談義をしていたのが嘘のようである。

 

しかし地球の裏側では、これから夏を迎えようとしている。

交通機関や通信手段が発達して、

どんどん地球のサイズが小さくなろうと、

そんなのは人間が勝手に行っていることで、

この水をたっぷりと湛えた天体は、我関せず、

きっちり正確に太陽系の軌道を巡り、

北が冬の時は南は夏になり、南が冬になれば北に夏が訪れる。

 

たとえ人類が核戦争で滅亡しても、

その営みは揺らぐことなく続けられるのだ。

腕の良い職人がつくった時計のように。

 

その地球の裏側の国ブラジルに夏の終わりの風景を

一篇の詩のようにつづった「三月の水」という名曲がある。

『エリス&トム~バラに降る雨~』というアルバムに

収録されていて、すべての曲を書いているのは、

ボサ・ノヴァの三聖人、もしくはブラジルが生んだ

偉大なる作曲家とうたわれるトム・ジョビン。

「三月の雨」は一曲目に収められている。

 

歌詞の一部を紹介しよう。

 

足跡、橋、ヒキガエル、アマガエル

残された森林、朝の光

夏の終わりを告げる三月の雨

人生の誓いを心の中で

 

つい口ずさんでしまいそうな流麗なメロディに乗せて、

同じくブラジルが生んだ不世出の歌手エリス・レジーナと

少し感傷的になりながらも恋人たちが囁きあうように歌うのだ。

夏の喧騒が終わりに近づいた寂しさと物思う秋の到来を、

茶目っ気たっぷりに歌うエリスの感性の瑞々しさ。

 

今年の夏は楽しかったけれど、もう終わったこと。

でもこれから訪れる秋も、あなたと一緒ならば悪くないかも。

そんな心のうちが映し出されたエリスの歌声に、

ぼそりぼそりと優しく語り返すように歌うトム。

二人の歌に絶対的な永遠の美を感じてしまう。

 

 

長い冬が終わりを告げ春の足音が聞こえ始めた頃、

地球の裏側では、こんなに切なくも美しい曲が歌われている。

(店主YUZO)

12月 4, 2011 CDレビュー |

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